243 / 327
大学生編
67
しおりを挟むーside 桐生玲人ー
最悪の気分。
怒りでもなく。悲しみでもなく。
ただ俺の中にあるのは無。
喪失感とでも言えばいいのか。
もしかしたら慶太が別の誰かになんてこと。
自分の繰り返してきた事を考えればこんな事簡単に予想が出来たのに。
でも、どこかで思っていたんだ。
慶太に限って、と。
浅はかで自分勝手な思い。
でも、俺はそれくらいうぬぼれていた。
慶太の思いに。あいつの俺への愛に。
全てに。
甘えていた。
あの日。
慶太があの車に乗り込んだ日。
それ以来。
俺は不気味なほどに帰りが早くなった。
今までと全く逆で。
俺の帰りを待っていたはずの慶太を、今度は俺が待つようになる。
そしてこれだけは誓って言える。
あの慶太が帰ってこなかった夜から一ヶ月。
俺は誰も抱いてはいない。
それは慶太も含め。
初めは、ただ慶太が本当に離れていくかもしれないと思ったから。
「別れる」という言葉を初めて慶太が発した事からだったと思う。
でも今は、もうそんなことを考える余裕さえなくて。
別の相手を考えるだけの余地が俺の頭の中にはなくて。
あるのは、慶太と俺の想像する相手。
他の何にも集中が出来ない。
気が気じゃなくなる。
慶太が帰ってこないと不安で。
胸をかきむしりたくなるほど苦しくて。
あいつが帰ってきたらほっとして。
たまに俺の嗅いだ事のない匂いが慶太からすると。
すぐに風呂場に連れてってシャワーをぶっ掛けたくなって。
なんで俺がこんな辛い思いを、って。
そんな相手などいないのに誰かを恨みたくて仕方なくなる。
でも、これが。
慶太の感じてきた思いなのだと。
考えないようにしてたけど、でも認めざるをえなかった。
だからだと思う。
俺が慶太に何も言えなかったのは。
そしてそんな時。
あいつがまた近づいてきたんだ。
106
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その日君は笑った
mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。
それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。
最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。
※完結いたしました。
閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。
拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。
今後ともよろしくお願い致します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる