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大学生編
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しおりを挟むーside 日比野敦ー
玲人のマンションで慶太を待った。
思っていたよりも慶太の帰りは早くて。
俺らが戻ってきて三十分、いや四十分くらいか。
ま、その間の玲人といったらそりゃまぁ、ひどいもんだった。
別に暴れるとか騒ぐとかじゃなくて、むしろ逆。
一言も話さずソファに座り、軽く両手を合わせてただうつむく。
あんな顔をした玲人。
これだけ長く付き合ってる中で初めて見た。
正直。
正直少しだけだけど。
「ほらな。ざまぁみろ」
そう思ってしまった部分があった。
あいつの親友なのに。
責めるとかそういう感じじゃなくてただ「自分のまいた種」だと思ったんだ。
なぁ、玲人。
今苦しいだろ?
つれぇだろ?
腹立ってんだろ?
泣きてぇだろ?
分かれよ。
気づけよ。
それが慶太の思いなんだ。
二人のマンションからの帰り道。
俺はそんなことばかり考えてたんだ。
そして翌日。
すぐに「調査」を開始する。
あの男の事。
同じ課の子に聞けば結構簡単に情報を手に入れられた。
佐倉伊織と言うらしい。
年は二十四才で、販売促進課勤務。
かなりのやり手で若くして成績トップ。
今のところ特定の相手はいない。
そして。
最近必ず定時で上がり、その後の誘いも全て断っていると言う事。
そんなに自信があったわけではないがきっと間違いないだろう。
慶太とどういう繋がりなんだ。
どんなに考えてみても答えは出ない。
何を思っても結局は想像の域を出ない。
埒が明かない。
(会って…みるかな。玲人、俺に出来るだけのことはしてやるよ。)
とりあえず昼休みにでも捕まえてみるかと。
俺の足は「佐倉伊織」のいる部署へと向かっていく。
待ち伏せ…この年で?
ったく、俺って本当に友達思いだよなぁ。
でも俺自身、そいつに興味があった。
慶太に近づけた男に。
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