僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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大学生編

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「お待たせしました」


出来るだけ急いで作って。

テーブルの上に所狭しと並べた。


「うわっ!すっげ。うまそー!!」


あっちゃんがいるだけでこんなにもにぎやかになる夕食。

正直、ちょっと救われる。


「たくさん食べてね」

「もち!いっただっきまーす」

「…いただきます」

「どうぞ」


みんないっせいに食べ始めて。

会話も弾んで。

「おいしい」と言ってくれて。

でもやっぱりそんな時間にも終わりは来る。


「じゃ、俺はそろそろお暇いたしましょうかねぇ」

ソファから「よいしょ」とあっちゃんが立ち上がる。


「ぇ…帰るの?」

「一応、明日も仕事だしね、俺」

「そっか…」


なら引き止めるわけにはいかないだろう。

玲人と二人玄関先まであっちゃんを見送る。


「慶ちん、また来るからね!」

「うん!」

「……来なくてもいいけどな」

「ちょっと、玲人!あっちゃん絶対来てね?」

「玲人のいないときに来るわ!」

「………」

「もう、玲人そんな怖い顔しないでよ」

「いやぁん、あっちゃん怖くて涙出ちゃう、くすん」

「お前、もう帰れ」

「へいへい…帰りますよぉだ。じゃ、二人ともまたね」

「あっちゃん、おやすみ」

「…そのうちな」


そして目の前で閉まるドア。

バタン、と言う音がいやに大きく感じる。

そして先程までとはうって変わって家の中に訪れる静けさ。

なんか居た堪れなくなってしまってごまかそうと自分から話し出す。


「ぁ…僕、お風呂…入ろうかな」

そう言って玲人の横を通り過ぎようとした。

その時。

ぐっと腕を掴まれて玲人のほうに引き寄せられた。

片手で頬を触られて。

もう片方であごをくいっと持ち上げられて。

「来る」、と思ったときには。

もう玲人の唇が僕のと重なっていた。


あまりにあっという間の出来事で何も反応が出来なかった僕。

玲人は何も無かったかのようにリビングへと消えていった。


触られた頬。

さっき佐倉さんに触れられたところと同じ。


偶然?必然?


熱い。熱をはらむ。

これは、誰の熱なのだろう。


佐倉さんなの?

それとも…玲人?


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