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大学生編

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ーside 水野慶太ー


「それじゃ…ここで」

「あぁ。家まで送って…って言いたいところだけどここで我慢してやるわ」

「…はい。おやすみなさい」

「おやすみ」

「…ぁ。」

「あ…悪い」

「……大丈夫…です」


おやすみと言われ。

彼の右手が僕の頬をなでた。

こんな事慣れてるはずなのに。

でも空気が甘くて。

そんなの久々で。

だから、なんか。

ちょっと、ドキドキしてしまった。


ちくん。

心が痛む。

これを罪悪感というのだろうか。


誰に対して?

玲人?

佐倉さん?

それとも自分?


マンションから十分くらい離れたところで下ろしてもらって僕は急いで家に向かう。


(帰ってご飯の用意しないと。…玲人、もう帰ってるかな?)


ちくん。

また痛む。


カチャリ、と玄関のドアを開けると電気がついている。

てことは…。


「た…だいま…」

「あ、おっかえり!」


リビングからぴょっこり出てきたのは。


「え?あっちゃん!」

「慶ちん、おっひさぁ」

「どしたの?え?」

「慶ちんに会いたくなったのだよ。お…どれどれ?今日の夕飯は何かな?」


僕の前までやってきて手に握られた買い物袋を覗き込まれる。


「ん…これは、肉じゃがと見た!」

「…正解!」

「やっぱり?俺、慶ちんの肉じゃがすき!」

「……おい」


少し不機嫌そうな声で今度は玲人が姿を現す。


「俺のこと無視して二人で何やってんだよ」

「えー何って…夕飯の相談?」

「相談…お前はただ食うだけだろが」


べしってあっちゃんの頭をはたく玲人。

そしてすぐに僕のほうを見る。


「お帰り」

「…ただいま」

「なんか急に敦のやつ来てさ…あいつにはメシ出さなくていいから」


それを聞いて後ろで「えー!玲人のケチぃ!」って騒ぐあっちゃんの声が聞こえる。


「大丈夫だよ。お肉たくさんあるし。すぐ作っちゃうね」

「…あぁ」


三人でご飯なんていつぶりかな。

さっきまでもやもやしてたくせに今はなんかワクワク。

急いで支度に取り掛かった。


そんな僕の背中に玲人が話しかける。


「慶太」

「なに?」

「…今日さ、バイト少し遅かったな」

「ぇ…ぁ、うん。なんか、ちょっとだけ、残業お願いされちゃって…」

「そっか」

「ん。…ごめんね」


ごめん。


ねぇ、玲人。

最近ウソをつく回数が増えてしまった。

ごめんね。


君は、気づいてたのかな?

だから、そんなこと聞いたのかな?


そうであって欲しいようで、絶対にあって欲しくはない。


ごめんね。

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