上 下
231 / 325
大学生編

55

しおりを挟む

隠れた俺らの近くをあの車が通り過ぎる。


そのわずか一瞬。

慶太の顔が見えた。

やっぱりあいつは。

微笑んでいた。


運転席に乗っていたやつは暗くてよく見えなかったけど。

多分、男…だと思う。


慶太はまったくためらう事も無く車に向かっていった。

という事は今日初めてああやって迎えに来ていたというわけじゃないのだろう。


いつからか毎日少しだけ遅く帰ってくるようになった慶太。

それはこういうことなのか?


慶太…お前…浮気をしているのか?

俺以外の男と。

キスをしたり抱き合ったり。

そういうことをしているのだろうか。


「…おい」


ぐっと肩を掴まれて思い出す。

自分が一人ではなかったということに。


「敦…」

「…玲人。お前に慶太を怒る資格なんて無いぞ」

「……」

「分かってんだろ?だからお前、隠れたりしたんだろ」


その通りだった。

と思う。

自分でも考える前に身体が動いた。

慶太に見つかりたくなかった。

俺があの場面を見たということ。


「なぁ、敦…」

「…あ?」

「慶太は…慶太はさ…」

「なんだよ」

「…いや…なんでもねぇ」

「『慶太は浮気をしてるのか?』そう聞きたいのか?」

「………」

「さあな、分かんねぇよ。現場見たわけじゃねぇしな。…そういえば満足か?」


たしかに見てない。

けど。

ただ会ってるだけだとしても、俺は。


今、俺の中にあるのはたった一つ。

『あいつは誰なんだ?』


慶太の周りにああやって親しく会うなんてやつはいなかったはずだ。

だって俺がそうしたから。


じゃあ、いつ?

どこで?


ふと頭に浮かんだのはあの見知らぬ男物の洋服。

慶太が一晩帰ってこなかった日に着て帰ってきた服。

そしていつの間にか消えていた服。

あれはその『男』のものなのか?

ぐるぐると駆け巡る『男』


吐き気がしてくる。

気持ちが悪い。


相手を。

消し去ってしまいたい。


そんなことばかりが頭を占めていて。

俺は敦の言ってる最後の一言を。

耳に入れてはいなかった。


「これがお前のしてることだ。玲人、今お前が感じてる思いを慶太は五年以上してきたんだ!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

Tally marks

あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。 カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。 「関心が無くなりました。別れます。さよなら」 ✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。 ✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。 ✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。 ✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。 ✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません) 🔺ATTENTION🔺 このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。 そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。 そこだけ本当、ご留意ください。 また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい) ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。 ➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。 個人サイトでの連載開始は2016年7月です。 これを加筆修正しながら更新していきます。 ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。

友人とその恋人の浮気現場に遭遇した話

蜂蜜
BL
主人公は浮気される受の『友人』です。 終始彼の視点で話が進みます。 浮気攻×健気受(ただし、何回浮気されても好きだから離れられないと言う種類の『健気』では ありません)→受の友人である主人公総受になります。 ※誰とも関係はほぼ進展しません。 ※pixivにて公開している物と同内容です。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

君が僕を見つけるまで。

いちの瀬
BL
どんな理由があっても、僕はもうここを去るよ。 2人の思い出が詰まったこの家を。 でもこれだけは信じてくれるかな。 僕が愛してたのは君だけだ。ってこと。 浮気攻め×健気受け なのかなぁ?もう作者にも結末、cpわかりませんw

君がいないと

夏目流羽
BL
【BL】年下イケメン×年上美人 大学生『三上蓮』は同棲中の恋人『瀬野晶』がいても女の子との浮気を繰り返していた。 浮気を黙認する晶にいつしか隠す気もなくなり、その日も晶の目の前でセフレとホテルへ…… それでも笑顔でおかえりと迎える晶に謝ることもなく眠った蓮 翌朝彼のもとに残っていたのは、一通の手紙とーーー * * * * * こちらは【恋をしたから終わりにしよう】の姉妹作です。 似通ったキャラ設定で2つの話を思い付いたので……笑 なんとなく(?)似てるけど別のお話として読んで頂ければと思います^ ^ 2020.05.29 完結しました! 読んでくださった皆さま、反応くださった皆さま 本当にありがとうございます^ ^ 2020.06.27 『SS・ふたりの世界』追加 Twitter↓ @rurunovel

処理中です...