230 / 327
大学生編
54
しおりを挟むーside 桐生玲人ー
「よっ!」
「おー、玲人!結構久しぶりじゃね?」
「かもな」
「…相変わらずつれないなぁ」
久しぶりに会った。
親友…と呼べるだろう相手。
すっかり会社員感が定着していて。
なんか、先を越された気分だ。
高校のころはあんな真っ金髪でへらへらちゃらちゃらしてたくせに。
バカ敦め。
「つか、俺はね、慶ちんに会えるのが楽しみなの!玲人は二の次!にゃはは」
「…殴るぞ?」
「あはっ。そのヤキモチ妬きなところも変わらないね、玲人君」
「はぁ…お前も相変わらずうぜぇな」
お互い毒を吐きあって。
その後なんか目があって。
二人同時に吹き出した。
「ははっ…はぁ…、てかさ、慶ちん俺らが来るの知らないんだろ?」
「…まぁな」
「サプラーイズって事?」
「そんなところだ」
俺らの向かう先は慶太のバイト先。
敦から電話かかってきて久しぶりに飯でも食おうってことになったのがほんのついさっき。
だから慶太を迎えに行ってそのまま飯に行こうという感じだ。
あいつのバイト先に行くのはいつ振りだろうか。
高校のころはあんなにも足繁く通っていたのに。
慶太はどう反応する?
もちろん驚くよな。
敦もいるし。
喜ぶ…と思う。
そうこうしてるうちに俺らはあのアックについた。
もうすぐバイトを終える慶太が出てくるのを裏口から少し離れたところで待った。
「慶ちん、まだかなぁ」
「…もう出てくんだろ?」
「まだかな、まだかなぁ」
「うっせぇ。出てくるっつーの!」
「だって、俺慶ちん目当てだし」
「……帰れ」
「えー、ウソだって。ちゃんと玲人にも会いたかったよーん!…って、あ、慶ちんだ!」
敦の声に促されて裏口のほうに目をやると、ちょうど慶太がドアから出てくるところだった。
少しだけ思い出す。
こうしてあいつが出てくるのを待ってた日々。
そういや慶太、終わりの時間嘘付いて俺のこと避けようとしたことがあったっけ…
敦がいて、慶太がいて、俺がいて。
きっと今日はまたあの慶太の笑顔が見れるはず。
そう思って、慶太のことを呼ぼう……としたんだ。
その時少し離れたところで、車のヘッドライトが二・三度光る。
慶太は。
なぜか慶太は、その車にまっすぐと向かっていく。
そして。
助手席に乗り込んだんだ。
あまりに予想のしていないこと過ぎて何が起こったのかよく分からない。
誰?
何?
なんで?
走っていって、車のドアをこじ開けて。
あいつの腕を掴んで、車から降ろして。
『何してんだよ!』
そう言いたいのに。
俺の取った行動といえば。
走り出す車に見つからないように。
建物の影に身を潜める事だった。
慶太?
車に駆け寄るお前が、まるであの頃みたいに笑えてたように見えたのは。
俺の気のせいだよな?
110
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説

記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?


【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる