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大学生編
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しおりを挟むーside 桐生玲人ー
「よっ!」
「おー、玲人!結構久しぶりじゃね?」
「かもな」
「…相変わらずつれないなぁ」
久しぶりに会った。
親友…と呼べるだろう相手。
すっかり会社員感が定着していて。
なんか、先を越された気分だ。
高校のころはあんな真っ金髪でへらへらちゃらちゃらしてたくせに。
バカ敦め。
「つか、俺はね、慶ちんに会えるのが楽しみなの!玲人は二の次!にゃはは」
「…殴るぞ?」
「あはっ。そのヤキモチ妬きなところも変わらないね、玲人君」
「はぁ…お前も相変わらずうぜぇな」
お互い毒を吐きあって。
その後なんか目があって。
二人同時に吹き出した。
「ははっ…はぁ…、てかさ、慶ちん俺らが来るの知らないんだろ?」
「…まぁな」
「サプラーイズって事?」
「そんなところだ」
俺らの向かう先は慶太のバイト先。
敦から電話かかってきて久しぶりに飯でも食おうってことになったのがほんのついさっき。
だから慶太を迎えに行ってそのまま飯に行こうという感じだ。
あいつのバイト先に行くのはいつ振りだろうか。
高校のころはあんなにも足繁く通っていたのに。
慶太はどう反応する?
もちろん驚くよな。
敦もいるし。
喜ぶ…と思う。
そうこうしてるうちに俺らはあのアックについた。
もうすぐバイトを終える慶太が出てくるのを裏口から少し離れたところで待った。
「慶ちん、まだかなぁ」
「…もう出てくんだろ?」
「まだかな、まだかなぁ」
「うっせぇ。出てくるっつーの!」
「だって、俺慶ちん目当てだし」
「……帰れ」
「えー、ウソだって。ちゃんと玲人にも会いたかったよーん!…って、あ、慶ちんだ!」
敦の声に促されて裏口のほうに目をやると、ちょうど慶太がドアから出てくるところだった。
少しだけ思い出す。
こうしてあいつが出てくるのを待ってた日々。
そういや慶太、終わりの時間嘘付いて俺のこと避けようとしたことがあったっけ…
敦がいて、慶太がいて、俺がいて。
きっと今日はまたあの慶太の笑顔が見れるはず。
そう思って、慶太のことを呼ぼう……としたんだ。
その時少し離れたところで、車のヘッドライトが二・三度光る。
慶太は。
なぜか慶太は、その車にまっすぐと向かっていく。
そして。
助手席に乗り込んだんだ。
あまりに予想のしていないこと過ぎて何が起こったのかよく分からない。
誰?
何?
なんで?
走っていって、車のドアをこじ開けて。
あいつの腕を掴んで、車から降ろして。
『何してんだよ!』
そう言いたいのに。
俺の取った行動といえば。
走り出す車に見つからないように。
建物の影に身を潜める事だった。
慶太?
車に駆け寄るお前が、まるであの頃みたいに笑えてたように見えたのは。
俺の気のせいだよな?
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