僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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大学生編

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ーside 水野慶太ー


「ケイ…好きだよ」

頭の中で何度も何度も繰り返すそのフレーズ。


『ごめんなさい』

なぜかその言葉が口から出てこない。


分かっていた彼の気持ち。

でも僕の好きな人は玲人で。

だから答えも決まってるはずなのに。

なかなかそれを口にすることが出来ないんだ。


黙り込む僕に耐えかねたのか、佐倉さんが話し出した。


「ケイ?」

「ぁ…ぁ…僕…」

「あぁ、分かってる。でも今は答えは聞きたくない」

「……」

「ごめんな、こんな事聞きたくなかっただろ?」

「謝るのは。…謝るのは…僕で…」

「ばーか。なんでだよ、くくっ」


佐倉さんは笑って僕のおでこをピンとはじく。

でもね、佐倉さん。

やっぱりその笑顔。

いつもと違う気がするんです。


「なぁ、ケイ?」

「……はい」

「明日。迎えにいくから」

「そんな…ダメです…もう…」

「明日も明後日もその次も。今までどおり会いたい」

「…出来ません」


そんなの、僕にだけ都合がいい事で。

佐倉さんには、なんにもメリットなんかなくて。

ただ。

彼を苦しめるだけで。


「会いたいんだ」

「…止めて…」

「お前さ、俺のこと心配でもしてんだろ?」

「……」

「俺に申し訳ないとかさ。自分には別に相手がいるのに自分に好意を持つ俺に何食わぬ顔して会えないとかさ」

「……」

「確かにさ…楽じゃねぇ」

「…ごめん…なさ…」

「正直、マジで辛いわ。お前の男の話聞くのも、お前がどれくらいそいつのこと好きなのかを知ることも」


苦笑いみたいな感じで。

ははっ、て。

眉がちょっと下がってて。


辛いのは自分だと思ってた。

だからそれを聞いてもらえてとても楽になった。

でもその分。

誰かにその辛さを渡してた。


「……けどな?」


そう続ける佐倉さんからは苦痛の表情が吹き飛んでいて。

ただ本当に真剣な。

『男』の顔をしていた。


「けど…それでも会いたいんだよ」

「佐…倉…さん?」

「会えなくなるのはもっと辛い」

「……」

「お前が申し訳なく思うのも分かる。最低なことをしてる気分なんだろ?けどな…それでもいいんだ」

「…僕…けど…僕…」

「だから明日も迎えにいくし、明後日もその次も、次も、次も…毎日会おう。話をしよう」


最後はまたいつものあのちょっと強気の笑顔に戻る。

そして一言。


「それに、俺さ、お前に俺のほうむかせる自信あるし。いつか…いつかお前に俺を好きだと言わせてみせるよ」


うん。

この人はこういう人だった。


最低でも…いいかな?

これを浮気と呼ばれるのだったら、それでもいい。


そう思う自分が居て。

僕は。

うなずいたんだ。

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