僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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大学生編

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あの後普通にふるまおうとしたんだけど。

やっぱりなんか普通には出来なくて。

いつも通りに話をするんだけど。

でも、いつも通り話せなくて。


そして。

時間がやってくる。

『日課』終了。


「僕…帰ります…」

「そうだな。…もう時間だもんな」


佐倉さんはいつもと変わらず伝票を持ってレジへと向かう。

会計を済ませて二人して店を出た。


「じゃあ、また明日な」

「……」

「お前明日バイトだろ?いつもの時間に終わんのか?」

「……」

「…ケイ?」


何も言おうとしない僕を変に思ったのか少し足を曲げ、僕と同じ目線にまでかがんでくれた。

顔が見れない。

目の前にあるその『瞳』から背けてしまう。


「ケイ?…どうした?」


この人は優しい。大人だ。

僕を包んでくれる。

安心できる。


このまま。

もしこのまま僕が気づかない振りをしたら。

そしたらこの人はいつまででも聞いてくれるだろう。


僕の話を。

僕と玲人の話を。

この人はそういう人だ。

だけど…


「明日は…いいです」

「は?」

「あの…迎え…いいです」

「…なんで?」

「……会えません…」

「何、用事?」

「ごめんなさい…」

「……何の、ごめんなの、それ?」

「もう…会わないほうが…いいです」


もうこの人に会ってはだめだ。

だって僕は知ってるから。

自分を見て欲しいと言う期待。

そうじゃなくてもそばにいたいという希望。

そして、顔も分からない相手に燃やす醜い嫉妬と言う名の感情。

その全てを知ってるから。


佐倉さん、あなたに同じ思いをずっとさせていたのでしょうか?

だったら、もう…僕は。


「急に、何?」

「ごめんなさい」

「ごめん、じゃ分かんねぇんだけど。…はぁ」

「……ごめんなさい」

「ケイ?こっち見ろ」

「…無理です」

「俺の顔見ろ!」


そむけていた顔を無理やり戻される。


怒ってる。

当然だ。殴られたりする…かな?

でも。

そっと開いた目の先にあったのは。

とても優しい顔だった。


「……ケイ?」

「ごめん…ごめんなさい…」

「ごめんはもういい」

「………」

「気づいたんだろ?」

「…え?」

「俺の気持ち」

「僕…ぁ…分からないです…」

「ケイ…俺な…」

「…ダメ!」


『何か』を言いそうになった彼の口に自分の手をやりふさぐ。

少しだけ驚いた目をして。

でもすぐにまたあの優しい顔に戻って。


ゆっくりと僕の手をどかす。


言わないで…お願い。

言っちゃ…ダメ。


「ケイ…好きだよ」
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