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大学生編
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しおりを挟むーside 佐倉伊織ー
友達の話をしたときのあいつの笑顔。
初めてみた気がしたんだ。
本当のあいつ。
いつしかケイの内の内の内側の一番奥にこもってしまった本当のケイ。
本当のあいつはこんな風に笑うんだと。
その笑顔にまた惚れる。
「楽しかったのか?」と、当たり前のことを聞いたつもりだった。
なのにあいつの返事からはどうもそれだけではないらしい事が伺える。
ついに来たかと思った。
きっと聞くのだろう。
『彼』のことを。
そいつとは高校で出会った。
名前まではさすがに出てこなかったのだけれど。
またケイは指輪に触る。
そしてケイは。
自分の事を「バカ」だといった。
バカだから、指輪をはずせないと。
そばにいたいと。
自分だけを見てくれなくてもいいと思ってしまうのだと。
なんとなく分かっていた事。
きっとその指輪の男はケイ以外にも相手がいるのだろうということ。
だからあの日家には帰れなかったのだということ。
ケイのことを知りたいと思っていた。
知りたくて、どんなことでも知りたくて。
もちろんその男のことも知りたくて。
どんな最低野郎なのか知りたくて。
でもやっぱり。
ケイがどれくらいその男のことを想っているのか。
それを知るのは。
少し、キツイかな。
『もしかしたら、もう愛されてないのかもしれない。…そう思っても彼を想っていたいんです』
思わず表情がこわばる。
止めようとしても止められない。
ケイ。
俺、好きなんだ。
お前の事が。
会ったその瞬間から。
その想いが俺に向いてくれる事はあると。
少しくらいはそう期待してもいいか?
俺はお前だけを愛する自信がある。
お前だけを見て。
お前だけを想って。
お前だけを抱いて。
ケイ?
俺の想いにそろそろ気づいて欲しいと思う俺は、せっかちだろうか?
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