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大学生編
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
この一週間ずっと待たせてしまったのかと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
だから断れなくて。
「三十分だけなら」と、言ってしまった。
佐倉さん。
強引で、マイペースで。
でもすごく素直な人みたいで。
僕がそう言った瞬間、彼の表情が変わったのが分かった。
佐倉さんは気づいてないみたいだけど。
すごく嬉しそうに見えたんだ。
急に手首を握られる。
正直、びっくりした。
だって全然知らないと言ってもいいような人だから。
でも、なぜか嫌悪感は無かった。
僕にこうして触れたのは、玲人とあっちゃん。
そして、佐倉さんだけ。
そのまま引っ張られてあのファミレス入って。
席について。
さぁ、どうする、って感じだ。
とりあえず、もう一回お礼、かな?
それともこの前来なかったことを謝ろうか。
僕があれこれ考えてるときに、佐倉さんのほうが先に話し出した。
「なぁ」
「…はい」
「言いたくなかったら別に言わなくていいんだけどさ…」
「…はい」
「お前さ、この1週間。大丈夫だったわけ?」
「……ぁ…はい…多分…」
何を基準に大丈夫と言えばいいのか分からなくてあいまいな返事をしてしまった。
「多分…ねぇ」
そうつぶやきながら何かを考えてそうな顔をする。
どうしよう。
聞かれたりするのかな。
この前はわざと聞かないでいてくれたみたいだけど。
聞かれたら、なんて答えよう。
「彼氏」がいる事はもうばれてる。
かといって、その彼と何があったとか、どうしたとかを言えるわけないし。
あぁ、どうしよう。
「なぁ、ケイ…」
来た!
「なん…ですか?」
「いや、なんていうかさ。…別に話せなんていわないからさ、安心しろよ」
「え?」
「こんなどこの誰ともわかんねぇやつにさ、そんなプライベートな話しいきなりしろったって無理だろ。
あははっ、それくらい俺にも分かるっつーの。」
聞かないで…くれるんだ。
てっきりそれを問い詰めるために待ってたのだと思った。
「だからさ、いつか話してもらえるような相手になりたいんだ、俺は」
「…ぇと…え?」
「何があったか知らねぇけど、お前さ、それ話せる相手とかいねぇだろ」
「……」
「だから、その相手になりてぇの、俺が」
「どうし…て?」
いきなりそんな。
意味がわかんない。
友達って事?
「どうして…ね。よく俺もわかんねぇ。でもなんか…お前さ、誰かいないと壊れそうだから」
やめてよ。
なんで。
「吐き出せる相手…本当は…欲しいんだろ?」
なんで。
僕のことなんか全然知らないくせに。
なんでさ。
なんで分かるの?
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