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大学生編
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しおりを挟む「そう、暇なの、俺。だからさ、ちょい付き合ってよ」
努めて明るく。
友達かのように。
普通に。普通に。
「あの、でも…僕…」
慌てるケイの両手には食料品の詰まった袋が握られていた。
なるほどね…。
「彼氏」のために夕飯、か。
ケイに会えて嬉しい気持ち。
同時にその相手に対する激しい嫉妬心。
でもそれは表さない。
まだ、そんなタイミングじゃないのは分かってる。
出会って一週間。
しかも会うのは二度目。
今「好きだ」と告げたところで断られるどころか信じてさえもらえないだろう。
だから、自分の感情をかみ殺す。
「三十分でもいいんだけどさ。…まだそれにはちょっと早いだろ?」
そういって手元を指差すと、ハッとしたように自分の後ろに隠す。
(いや、もう遅いんだけどね。ははっ…)
「どうしても今日無理なら、明日でもいいけどさ」
今日が無理なら明日。
明日が無理なら明後日。
お前に会えるならもう少しくらい待ってもいいや。
今日は無理か、と諦めかけたとき。
「…三十分だけ…なら…」
つぶやかれた声はとても小さなものだったけどそれを聞き逃す俺じゃない。
現金なものでそれを聞くなり先ほどまでの嫉妬が少しだけ和らいだような気がした。
「マジで?」
「…はい。でも…本当に三十分だけ!」
「分かった、分かったっつーの。三十分でも何でもいいからさ。つかじゃ、早く行こうぜ。時間もったいない」
三十分なんて絶対あっという間に過ぎてしまう。
そう、夢かのごとく。
無駄になんてしたくないととっさにケイの手首を掴んだ。
細い手首。
俺の手がゆうに余る。
初めてケイに触れた。
触れた箇所から熱が伝わって。
身体全体が熱くなるようなそんな錯覚を起こす。
とりあえずそのまま二人してあのファミレス入って。
この前と同じ席について。
タイムリミット。
三十分。
何を話せばいい。
何を聞けばいい。
ケイ、お前は何を教えてくれる。
俺はお前をもっと知りたいんだ。
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