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大学生編
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
夕べ。僕らは初めて一緒に眠らなかった。
もちろん玲人の帰りが遅かったり、朝帰りした日を除けばだけど。
眠れる環境にあるのに一緒に寝ない。
それが初めてだったんだ。
彼がいる前で別々の部屋に入って行く勇気なんか僕にはなくて。
風呂に入る、と玲人が言ったのをきっかけにしてしまった。
せめて「おやすみ」くらいは言わないとと思う。
まだ九時半と言う事もあって玲人は不思議そうな顔をしてたけど。
でも、あまり突っ込まれることもなく彼はお風呂場へと向かっていった。
それを見送ってすぐ玲人の着替えを用意して。
脱衣所において。
そして、僕はあの部屋へと閉じこもった。
二十分位してからだろうか。
足音が近づいてくる。
(電気消さないと!)
まだ起きてると思われなくて。
部屋に入ってこられたら絶対に抵抗なんか出来ないから。
急いで電気を消す。
毛布を頭からかぶってひたすら息をひそめた。
すぐに足音が遠ざかっていく。
そっと顔を毛布の中から出して一息つく。
(はぁ…何やってんだろ、僕。)
そのまま天井を見上げて。
そしていつの間にか。
眠りに落ちていた。
それから一週間。
ずっと別々に寝ている。
夕飯を一緒に食べて。
テレビも一緒に見て。
でも別々の部屋に入る。
何か言いたげな顔をする玲人。
でも、何も言ってこない。
それに甘えて僕も何も言わない。
あの日から七日目の今日。
バイトを終えて買い物でもして帰ろうと少し寄り道。
気づくと1週間前のあの場所の近くに来ていた。
そして、あのファミレスが見えた。
見てしまったんだ。
見なければよかったのに。
窓際に座るあの人の姿。
次の日「待ってる」と言ってくれたあの人の姿。
そして「来ない」と僕が答えたその相手。
佐倉さんがそこにいた。
一週間前とまったく同じ席で。
目の前の道を行き交う人の顔を眺めながら。
そうまるで。
まるで誰かを探してるかのように。
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