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大学生編
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しおりを挟むーside 佐倉伊織ー
ケイと別れた後、自分のマンションに戻り急いでシャワーを浴びる。
めちゃくちゃ眠い。
二十四才にして貫徹かよ。
でも眠るよりもあいつと夜通しいることを選んだ俺は正しかったと自信をもって言える。
バスルームを少しだけすっきりした頭で出る。
いつもどおりスーツに身を包み。
そしていつもどおり会社へと向かった。
「あ、佐倉さん!おはようございまぁす」
「おはよ」
事務の女の挨拶もおざなりな感じでかわし、着いてそうそう俺はデスクに向かった。
なぜって?
今日の分の仕事をすぐ終わらせるため。
早く終わらせて。
定時で上がるため。
俺には行く場所があるから。
待つべき人がいるから。
な、ケイ。
一睡もしてなくて頭もいつもより回りが悪いはずなのに。
でも、お前に会うためだと思えば。
なぜかいつもよりも仕事が進むんだ。
そして、五時半。
よっしゃ。
自分のものを全てかばんに詰め込んでバッと席から立ち上がる。
「お疲れっした。佐倉、帰ります!」
「お…おぅ」
「佐倉さぁん!今日は夕飯どうですかぁ?」
「あ、無理!じゃ」
同僚の声も群がってくる女の声も適当にあしらう。
急げよ、伊織。
もしかしたらもう来てくれてるのかもしれない。
ケイ。
マンションに着いて、冬にもかかわらず走ったせいで汗だく。
せめてシャワーはと思いさっと済ませる。
普段着に着替えて昨日の場所へと。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「いや……」
店内を見回してみた。
ケイの姿は…ない。
「後で来ると思うんで」
「そうですか。ではこちらの席へ…」
「あ、悪いんだけど、あの席いいかな?」
「はい。ではどうぞ」
昨日と同じ席を指差して指定する。
(六時半…か。)
あの時ケイは。
「来ない。」
確かにそう言っていた。
でも来るかもしれない。
また「彼氏」と問題を起こして。
俺に会いに来てくれるかもしれない。
思い人の不幸。
それでも俺に会いに来て欲しいなんて。
なんで難しいヤツに行こうとしてるんだ。
会社の女なら誘えばすぐ落ちるだろうに。
それでも今の俺には。
あいつしか欲しいと思えないんだ。
どんなに難しくても。
たとえ手に入れるのが不可能なのだとしても。
心の底から欲するのはケイだけ。
日付が変わるまで待った。
でもケイは現れなかった。
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