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大学生編
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
カチャリ………バタン。
玄関のドアが開いて、そして閉まる。
その音を確認して。
それでもそれから五分くらいは余裕を持って。
そして小さめの部屋から僕は出てみた。
本当に玲人は行ったみたいだ。
家の中で独りきりになったとたん急に眠気が襲う。
(眠…い。そういえば、昨日寝てないんだっけ。)
自分が昨夜一睡もしていなかったことに改めて気づく。
そして僕の視線が向かったのは、寝室。
眠い。
でも、あそこではもう寝れない。
眠れない。
きっと一秒たりとも。
身体が拒否をしてしまう。
ヤバイ。
ダメ。
思い出しちゃダメ。
「ん…はぁん。レイ…あっ、あん…レイぃ…」
せっかく忘れてたあの子の声。
よみがえりそうになる。
寝るんだ。
眠って何もかも閉じ込めてしまえばいい。
僕はまたさっきまで籠っていた部屋へと戻る。
いろんな荷物の置かれてる物置のような部屋。
そこには昔僕が使っていたものも残っていて。
その中から毛布とクッションを取り出して床にそっと横になった。
一度身体を横たえてしまえば、後は襲ってくる睡魔に身を任せればいいだけ。
ぁ…玲人…さっきなんて言ったっけ?
頭がどんどん考えられなくなっていく中、先ほど玲人の言った事を思い出す。
「お帰り」
違う、これじゃない。
「大学行くから」
これでもない。
なんだっけ?
「夕飯、いつもの時間に頼む」
あ…これだ。
夕飯…か。
作らないと…。
でも、やっぱり僕は。
それだけのために側においてもらえてるのかな。
意識が落ちる瞬間に頭に浮かんだのは。
そんなことだった。
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