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大学生編
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
どれくらい歩いたのだろうか。
どれくらい時間が経ったのだろうか。
ずぶぬれになった僕の身体は外気にさらされて凍り付いてしまいそうだ。
今更だとは思ったけれどふと目に入ったコンビニの入り口で雨宿りをしてみた。
入っていく人。
出て行く人。
全ての人の視線が僕に向かう。
それもそのはずだ。
真冬にもかかわらず傘も持たず、ずぶ濡れになってただボーっと突っ立ている人間。
どう見たって変なやつにしか映らないだろう。
一度立ち止まってしまうと今度は足が動かなくなった。
雨はしのげるものの濡れた身体が乾くわけではない。
焦点の定まらないような感じでただどこでもない一点を僕はじっと見つめていた。
「ねぇ、ちょっと」
ふと男の人の声が降りかかってくる。
こんな自分に話しかける人間などいるはずないし、もちろん僕は反応などしない。
「おい、大丈夫?聞こえてんの?」
大丈夫?
何が?僕?
そんなわけないよね。
「君の事だよ!」
そう言われて肩をぐいっと掴まれた。
目線だけちらりとあげてみる。
背の高い男の人がそこにいた。
僕とそんなに年が変わらない感じの人。
とりあえず一目だけ見てまた僕は視線を元の位置に戻した。
一人にしてくれていい。
こんな僕に関わらないでくれていい。
そう態度で示したつもりだった。
なのに。
「俺さ、君に話しかけてるんだけど」
かまわず続けて話しかけてくる。
「君さ、今何月だと思ってるわけ?二月!真冬だ。そんなずぶぬれで風邪引くくらいならいいけど肺炎とかでも起こしたらどうするつもり?」
うるさい。
関係ない。
他人。
聞こえない。
「俺んちすぐそこだからさ。シャワーくらい貸すし」
「………」
「着替えだっているだろ?」
「………」
「おい!聞いてるの?」
「………ない」
「は?」
「…あなたに関係ないでしょ?放って置いてください…」
顔も見ることなく感情もこめることなくそう言い放った僕にその人はため息を一つついた。
そして僕の前から去って行った。
いらない。
玲人じゃないと要らない。
ほかの人の温もりなんて要らない。
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