僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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大学生編

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あのクリスマスからはまた平淡な日々が続いている。

冬休みに入って、大晦日、お正月。

玲人と一緒に過ごす事ができた。


僕の作ったおせちを食べてくれて。

おいしいと言ってくれて。

一緒に夕飯も食べて。

いつもの毎日。


なんだけど…。


一ヶ月経った今でもあの人はまだ僕の元にやって来ている。
 
僕の『父親』。


あのクリスマスの後、週に一回は僕の前に現れるようになった。

何かを言いかけるあの人。

でも僕はその人の言葉をさえぎり、「用事がある」「忙しい」なんだかんだと理由をつけてあの人と接触を図らないようにしてきた。


そして今日も。

大学から一歩出たところで呼び止められた。

「慶太」と。


またいつものように顔も見ず「ごめんなさい、急いでますから」、そう他人行儀に言って駆け出した。

でも、少し進んで立ち止まる。


これ以上同じことを続けても、この人はずっとやって来る気なのかもしれない。

だったら、今話をしてもう来ないようにしてもらったほうがいいのではないか。

そう思ったんだ。

くるりと踵を返し、あの人のほうへと向かった。


「……何か用があるんですか?」

「慶太……話を。少しだけ話をしないか」

「話って…」

「30分。30分だけでいいから、父さんに時間をくれ」


『父さん』

自分の事を父さんと呼ぶこの人。

今でも僕のことを『息子』だとでも思ってるのだろうか。

僕の目には今では他人にしか映らないのに。

そんな冷めた目で見てしまう。


学校の前でこんな話をして変なうわさなど立てられでもしたら困る。

そう思って僕は『父親』と少し歩いたところにある人気の余りないカフェへと入った。

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