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大学生編
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
「お疲れ様でした。先に帰ります」
「お、お疲れさーん。水野、また明日な」
「はい」
大学四年。
研究室に入り大学院の先輩について僕もテーマに基づいて研究をする。
卒論書いたり、実験データをまとめたり、バイトもしたり。
とても忙しい。
本当ならば今の時期就職に向けてもっと忙しいこともあるんだろうけど。
でも僕は大学院に進むと決めているため、まだ就職の心配は全く無用で他の学生たちに比べればいくらかましだ。
もうしばらくはこうして研究に没頭するほうが僕には合っている気がするから。
それにそうしてる間は余計な事を考えなくてすむから。
構内から外に出ると一気に僕を纏う温度が下がる。
(寒いなぁ。……急いで帰らなくちゃ。夕飯の支度。)
十二月ともなればもう真冬と呼んでも差支えがないだろう。
僕はマフラーを首に巻きつける。
身体を縮めて何とか寒さをしのごうとした。
その時、なんか妙な違和感を感じる。
(ん?)
校門を出ようとしたとき、なんとなくだけど誰かに見られているような気がしたんだ。
小走りだったのを立ち止まり、あたりをきょろきょろと見回してみる。
でもやっぱり誰もいない。
(気のせい…だよね。)
自分の勘違いだろうとすぐに気にするのをやめ、また家路へと急ぐ。
だけど。
ほんとは、気のせいなんかじゃなかったんだ。
駆けていく僕の後姿をじっと見てる人がいたなんて事。
そのときの僕は知る由もなかった。
もちろんそれが誰かなんて事も。
ただ、今日は玲人の大好きな中華を作るんだと。
「おいしいよ」と心からそう言って欲しいと。
それしか僕の頭の中にはなかったんだ。
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