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過去~高校生編2
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しおりを挟むーside 桐生玲人ー
必死で。
必死で必死で必死で。
死に物狂いで探したんだ、あいつを離さなくてすむ方法。
ようやく見つけたと思った。
一緒に暮らす。
そうしてしまえばあいつをまだ手元においておくことが出来る。
大学が離れたってなんだって。
住むところが一緒ならばあいつが逃げる事など決して許さない。
卒業式で俺に別れを切り出そうとするあいつを何とか抑えた。
あそこで言われてしまってはどうしようもなかったから。
何とか引き伸ばして。
その間にマンションを契約して、合鍵を作って。
誕生日に間に合うように全てを終えた。
当日あいつの部屋に行くといつも以上に豪勢な料理がテーブルの上にたくさんあった。
そして俺は気づく。
料理を運ぶ慶太の指には俺のやった指輪がはめられていないということに。
今まで一度もそこから離れることはなかったのに。
今日はいつもの定位置にそれはなかった。
本気で今日別れるつもりなのだと悟る。
でもそんなことさせはしない。
ポケットに入った『プレゼント』を俺は確かめた。
ついにそのときはやってくる。
先に言われてはいけないとあいつの話なんて全て無視して自分の言いたい事だけを話し続ける。
プレゼントを渡そうとするのに慶太は受け取ってはくれない。
なら、自分で見せるまでだと俺はその包みを自ら手にした。
何かに感づいて慶太はそれを止めようとする。
無理だ。
やめはしない。
お前を離す事など絶対に無理なんだ。
「一緒に暮らそう。」
唖然とする慶太を俺は押して押して押しまくった。
慶太。
控えめなお前。
全てを自分一人で抱え込むお前。
俺を狂わせるお前。
でも、やっぱり、俺を幸せにしてくれるお前。
そして、俺には弱いお前。
最後には「うん」とうなずく。
そうなるだろうと分かってた。
「また指輪、するよな?」
そしてダメ押し。
この腕の中から逃がしはしない。
力の限りに抱きしめた。
慶太の初恋。
俺にとっても初恋。
俺らのこれからは明るいのか?
それとも、今以上に地獄なのか?
それでも慶太。
お前は、俺のそばにいるんだろ?
こうして俺らの高校生活が終わった。
そして大学へ。
(高校生編2終了)
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