僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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過去~高校生編2

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お皿の上のケーキを食べ終えて、紅茶を飲み干す。


「玲人、紅茶おかわりいる?」

「いや、大丈夫」

「そっか…」

「あぁ……」

「……」


一気に訪れる沈黙。

今日こそ言わなくちゃ。


「あの…玲人…「慶太。」」


話を始めようとした僕に玲人がかぶせる。


「慶太…俺さ、話しあるって言ったよな」

「うん。僕もね、あるの」

「言ってたよな、そうやって」

「うん…あの、僕の話はね……」

「俺の!……俺の話から聞いてくれないか?」

「え?」

「先に俺から話させてほしい」

「だめだよ!僕が…先に言わないと…」

お互いどちらが先に自分の話をするのかと競い合いだす始末。


ここは譲っちゃだめな気がする。

先に言わないと後悔する。

玲人の話を聞いちゃダメな気がするんだ。


「慶太…。これ、プレゼント」

慌てふためく僕を制するように目の前に小さな箱が置かれる。


「玲人…受け取れないよ。だって…僕…もう…」

「いいから、開けて」

「………無理。あのね、玲人。僕の話。もしかしたら…もう、気づいて…」

「お前が開けないなら、俺が開けてやるよ」


僕の話を完全に無視してその小さな包みを解きだす玲人。

ダメ。

開けちゃダメ!


「ダメだよ!開けちゃ…それ開けたら…」

「はい。これ…誕生日プレゼント」


包みから現れたものを僕に見せようとする。

慶太、見るなよ?

だってそれ見たら……


そんな僕の手に玲人はそれをそっと置いた。


「なんで…玲人。…これ」


僕の手にあるもの。

一昨年もらったものと同じもの。

ううん、少しだけ形が違うか。


それは、『鍵』だった。


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