僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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過去~高校生編2

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「あっちゃん、行っちゃった…」

「行ったな」


そして僕らは二人きり。

とりあえず何か言わなきゃと思って出た言葉がこれだった。


「あの…玲人。卒業おめでとう」

「いや卒業おめでとうって…お前もだろ?」

「ぁ……そうだった」


ははは、と玲人は大きな声を上げて笑う。

先ほどまであっちゃんに触られていた髪に今度は玲人が触れた。

わしゃわしゃと僕の髪は乱された。


「ちょ…と、玲人、もうやめてよ」

「悪ぃ悪ぃ。敦の言うようにお前の髪触り心地よすぎなんだよ」

「褒め…てるの?」

「あぁ、褒めてる」

「ありがと…」

「どういたしまして」


あちこちにツンツンと乱れまくってる髪を今度は優しくなでて整えてくれる。


「…ていうか、それにしても玲人、荷物大変そうだね」


そんな玲人の足元やもう一歩の手には花やらプレゼントやらたくさんだ。

僕はジーっとそれに目をやる。


「なんか…すげぇよな…。あ!よかったらさ、この花とか慶太どう?家に飾る?」


そう言っていくつかの中から一つ選んで僕に差し出してきた。


「…だめだよ!玲人がもらったんでしょ?もらったからには玲人が責任もってちゃんとお世話するの」

「……そうだな」

「そうだよ」

「俺が花の世話か。……なんか想像つかねぇ」

「………確かに」

「おい!慶太、なんつった?」

「何も言ってません……」


これだけたくさんのお花が玲人の家の中に所狭しと飾られる。

そしてそのお花たちのお水を毎日代えてあげて。

もしかして話しかけたりなんかして?

どうしよ。

なんか…笑いが。


「ふ……ふふっ…ははっ」

「慶太お前…変な想像したろ」

「して…なぃよ?あははは!」

「こら!笑うのやめろよ」

「ふふ…分かった!ははっ…は…は~あ」

「こんなに花いっぱい。俺にどうしろって言うんだよな?」


眉間に皺を寄せながら、ちょっと睨む感じで花たちを見てる。


「じゃあさ…慶太。毎日水代えに来てくれよ」

「え?」


びっくりした。

まさかそんな展開になるなんて。


でも。

今が言い出すタイミングなのかもしれないと思った。

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