僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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過去~高校生編2

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今日は卒業式。

他の高校とは少し違って結構遅めの卒業式だ。

前期も後期も終わって落ち着いてから、というのが理由らしい。

もう桜がちらほらと咲き始めている。


(三年前、こんな風に桜を見上げながらこの高校の門をくぐったんだよね。)


三年。

たかが三年。

されど三年。

僕の人生を大きく変えた三年だ。


入学して新入生代表の挨拶したんだったなぁ。

毎日本ばかり読んで、誰とも仲良くならなくて。

それでいいと思ってたのに。

玲人、君に出会った。

人の生活にズカズカ入り込んでくる君が初めは邪魔で仕方なかったけど。

君がいて、あっちゃんがいて。

君を好きになり、君も僕を好きになってくれて。

恋人というものを初めて手にした。

キスをして、抱き合って。

この幸せな日々がずっと続くんだ、なんて夢見てた。

でも君の浮気が始まって。

一回。

二回、三回…。

いつしか僕は笑えなくなる。

あっちゃんが離れて、僕は一人になってしまった。

また人との間に壁を作るようになって。

それでも玲人、君がいればいいと思ってたんだけど。

僕らの限界を感じてしまったんだ。

もう離れるしかないと思った。

そして……



「卒業生一同!起立。礼。……これにて公立修蘭高等学校第47回卒業式を終わります」



お別れだね、玲人。

僕はこれから君に別れの言葉を言わなくちゃいけない。


周りで他の生徒たちがそれぞれ握手したり抱き合ったりして泣き出す中、僕は違う意味で涙を流す。

誰にも見られる事のないたった一粒だけの涙だけど。


それをぐいっと制服の袖で拭った。

そして「よし」と自分に一声かけ、他の生徒が揃って出ていく明るい外へと僕も向かった。


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