僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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過去~高校生編2

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「慶太のことなんだろ?前も言ったけど、お前が急にここに来るなんてそれくらいしかねぇしな」

「………」

「………聞いたのか?」

「…聞いたって、何を?」

「聞いたんだろ、大学の事」


言葉が出なかった。

俺が昨日まで知らなかったことを、なんで敦が知っているんだ。


「いいか、怒んなよ!これで慶太にキレたりしたらマジで許さねぇから」

「…分かった」


込み上げる怒りとどす黒い感情を何とか自分の中で押さえ込む。


「俺もそんなに前から知ってる訳じゃねぇよ。本当にたまたま会ってなんか大学の話になってさ。てっきり慶太もお前とS大に行くものだと思ってたから…」

「……あいつ行かないんだと」

「…みたいだな」

「担任には夏休み明けに言ったくせに俺には昨日まで言わなかったんだ」

「そうか」

「いい訳いっぱい言って。……俺もT大に行こうか、なんて言ったら焦りまくってさ…はは…」

「……」

「敦……慶太はさ…俺と別れる気なのか?」


あいつには聞けなかったことをなぜか敦に聞く。

敦は何も答えはしない。

が、かえってそれが答えになっていた。


「やっぱ……そうか」

「玲人…。いいか、俺は同情はしねぇ。正直自業自得だと思ってるよ」

「………」

「あれほど…何度も言ったろ?なのにお前は止めなかった。その報いだよ」

「……報い…か」


俺のしてきたこと。

別の女を抱きまくった。

男にも手を出した。

無理やりあいつを抱いたりもした。

記念日をすっぽかした。

それから。

あいつから笑顔を奪った。


普通に考えりゃ、別れるに決まってるよな。

どう考えたって俺が一方的に悪い。

いくら自分で慶太が好きだと言ってみたところで信じてもらえる訳もねぇし。

でも。


「なぁ、敦」

「…んだよ」

「……それでも、それでもさ」

「…」

「それでも…離したくないときはどうすりゃいいんだよ」

「玲人、お前…」

「なぁ?どうすりゃ、あいつの事離さないですむ?ずっと俺のそばにおいていられる?」



教えてくれよ。

俺にはわかんねぇ。

誰でも良いから俺に答えをくれよ。


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