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過去~高校生編2

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ーside 桐生玲人ー


あいつが眠ってからもしばらく俺はその寝顔を見ていた。

時折うっすらと笑みを浮かべる慶太。

「いい夢を見ているのか」と俺まで嬉しくなる。

そのままいつの間にか俺も寝てしまっていた。


その晩見た夢。

あいつの手を離すまいかとしっかりと俺は握り締めていた。

そんな俺に慶太も微笑みかけてくれる。

「好きだ」と言おうとしたんだ。

なのに、その時にはもうあいつは俺の隣にいなくて。


俺から五十メートルくらい離れた先にいる慶太が見えた。

そしてその隣には顔の見えない別の男。

楽しそうで、幸せそうで。

その男が慶太の頬にキスをすると、慶太は恥ずかしそうに照れて顔を真っ赤にしてた。


俺はそれを動く事もできずにただ見てるだけだった。


次の瞬間ぐにゃりと視界が揺らいで。

目の前が少しだけ明るくなって。

俺の目の前には慶太がいて、「おはよう」と笑いかけてくれる。


「よかった…ちゃんといた」


力の限りに慶太をきつく抱きしめた。

離れてなどいない。慶太はここにいる。

それを身体で確かめるために抱きしめる腕に力を込めた。

情けないほど震えていたその声はどうも慶太には聞こえてなかったらしい。


苦しそうにする慶太に「ごめん」と謝って少しだけ力を緩めた。

その後普通に朝飯食って、なんでもないような話をして俺は慶太の家を後にする。



自分のマンションではなく俺は別の場所へと向かった。

ここへ来るのは久しぶりだ。

エントランスでルームナンバーを押すとすぐに返事が来た。


「はいよ」

「玲人」

「おぅ。今開ける」


開いた扉から中に入り、あいつの部屋に向かう。

チャイムを鳴らすまでもなくあいつは玄関の前に立っていた。


「久しぶり…敦」

「ホント、久しぶりだな。ま、入れよ」


しばらくぶりに訪れた敦の家はまったく変わってなかった。

リビングのソファに向き合って座る。


「で…何があったわけ?」

「は?」

「何かあったから来たんだろ、ここに」

「……あぁ」


どうやって話を持ち出せばいいのだろうか。


『実は慶太が俺と別れようとしてるみたいでさ…ははっ』

『とうとう、俺愛想つかされちゃったっぽいんだけど!』


思いつくのはこんなばかげたものばかり。

そんな俺に気づいたのか敦のほうから話し始めた。


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