155 / 327
過去~高校生編2
59
しおりを挟むーside 水野慶太ー
とうとう玲人に大学のことがばれてしまった。
一度大きな声を出されたもののそれ以外で別に怒鳴られはしなかった。
殴られもしなかった。
そして一番怖かった突き放されるという事もなかった。
少なくとも僕はそう思った。
ただ。
玲人はただひたすら優しかった。
温めなおしたご飯をまた一緒に食べだす。
「おいしい」「うまい」と何度も何度もほめてくれた。
洗い物のときは付き合い始めのころのように、僕の後ろから腰に手を回して軽く抱きしめる。
「洗い物がしにくい」という僕に「そうか」とつぶやきはするが、決してその手を緩めようとはしなかった。
そしてお風呂に入って、部屋の電気を消して、二人で僕の狭いベッドにもぐりこむ。
そこでも後ろから僕の事を抱きすくめた。
「玲人……その…しないの?」
「ん?あぁ…今日はこれでいいよ」
二年前の今日と同じ。
玲人はただ僕のことを抱きしめるだけ。
彼のぬくもりを感じながら僕は眠りについた。
翌朝目覚めると最近では珍しく玲人はまだ僕の隣にいた。
伏せられた瞳を見つめる。
この寝顔を僕は後何回見ることができるのだろうか。
何度こうして昼夜を共にすることができるのだろうか。
何度キスをして抱き合う事ができるのだろうか。
玲人、勘のいい君はきっと気づいてしまったよね。
僕のした決断が何を意味するのか。
でも、それを直接僕にに確かめるようなことはしなかった。
きっと君も分かってるからでしょ?
これが僕らにとって一番いいことだと。
だから何も言わなかったんだよね?
ゆっくりと開いていく玲人の瞳。
起きぬけの彼に僕は「おはよう」と一声かける。
すると玲人はまた僕の事を力いっぱい抱きしめた。
ねぇ玲人、その時に君の口から出た言葉。
聞かなかったことにするよ。
「よかった…ちゃんといた。」
12
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

記憶の代償
槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」
ーダウト。
彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。
そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。
だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。
昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。
いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。
こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。

キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる