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過去~高校生編2

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ーside 日比野敦ー


慶太がとうとう決意してしまった。

別れを選んでしまった。


これが一番いい。

俺だってそう思う。


慶太はこれで解放されるだろう。

玲人だってきっとそうなる。


なのに。なのになんで。

こんなにもこの二人が別れるという事にショックを受けているのだろう。


「いつまで言わないつもり?」

「……いつまでって?」

「だから玲人に。大学の事も…別れることも」

「あぁ…大学はね、きっとそのうちバレちゃうよね?自分からは…言わないつもり」

「じゃあ、別れるのは?」

「それは……高校卒業までは…」

「ずっと隠し通すの?」

「出来ればそうしたい」


慶太の顔に迷いはない。

一度決めたらきっとこいつは絶対にそうするのだろう。


「いい…よね?」

「…なにが?」

「もうちょっとだけ…いいよね?」

「慶ちん?」

「本当はさ、今別れたほうがいいんだろうけど。でもさ、最後のわがままだからいいよね?」

「……」

「卒業まではさ…玲人の隣にいて…いいよね?」


すがるような目で俺を見上げる。

「いいよ」と、そう言って欲しいのだろう。

俺の許可なんか要らないのに。


「…あぁ…いいよ」

「よかったぁ…ありがと…あっちゃん」


最近ちらりと慶太を見かけたとき、なんか吹っ切れたような顔をしていた。

そしてそれはこの決断せいだったと今分かった。


「慶太…本当に、いいんだな?」

「うん」

「そっか…」

「玲人の事…解放してあげないとね?」

「…なんで、違うだろ。それは、お前の方で…」

「だって僕がいるせいで、玲人遊べないでしょ、あんまり。もっと早くそうしてあげられたらよかったんだけど…」

「……」

「うん、大丈夫。まだ時間あるから。だから…ちゃんと…離してあげられる」


慶太は泣かない。

絶対に泣かない。

きっと別れを言うときも泣かないんだ。


別れたあと、お前は一人で泣くんだろ?


「お前が決めたなら…それでいい。後悔しないならいいよ」

「うん…しないよ」


そう言って微笑む慶太を、俺はすごく抱きしめてやりたかった。

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