僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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過去~高校生編2

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そして、玲人の誕生日。


今度は間違いなんて絶対に犯さない。

ちゃんと決められた日、決められた時間に行くと自分に誓う。


せっかくの誕生日なのに、もうあんなこと二度とごめんだ。


鍵も使わない。

玲人が開けてくれなければ入らない。


約束の時間。

僕は玲人宅のチャイムを鳴らす。


ピンポー…ン


一度目では出てこない。

もう一度鳴らす。


ピンポーン


少し待つとドアがゆっくりと開いた。

そしてそこから出てきた玲人は上半身裸だった。


まさか、と思って玄関口を覗き込む。

そこには一足のスニーカー。

女の子サイズでないのが見てすぐに分かった。


「慶太…悪いけど…ちょっと待ってくれるか?」


目をそらしながらしどろもどろに僕に告げる玲人。


結局約束してもこうなんだね。

君の誕生日。

隣にいるのは僕でなくてもいいってこと…か。


「いいよ、帰る。…これ、よかったら食べてその子と。」


自分の持っていたプレゼントやら料理やら入った荷物を玲人に押し付ける。

最後に玄関にあるスニーカーを指差して、僕は部屋に入ることなくその場を去った。


「ちょっ…慶太!」と引き止める玲人を振り払い、僕は来た道を戻った。


やっぱり自分で入らなくてよかった。

この程度のショックですんで僕はラッキーだった。

もう浮気がどうのとか、そういう次元で物事を考えないようになっていたんだ僕は。


きっともう彼が僕だけを見てくれることなど無理だろう。

だったら、せめて嫌われないようにすればいい。

そして自分が受ける痛みを最小限に。


家に着くなり僕は自分のベッドに大の字に寝転がった。


(……眠い。すごく眠い。)


眠ればいいんだ。

そうすれば何も考えなくていい。

何も見なくていい。

何も聞かなくていいから。


すぅっと眠りに落ちていく。

もう夢も見たくない。


何もない深い世界へと。

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