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過去~高校生編2
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しおりを挟むーside 桐生玲人ー
「解放してやれ。」
敦にそう言われた。
「別れてやれ」ではなくて「解放してやれ」
まるで俺があいつのことを監禁でもしてるかのように。
でも実際、それに近い状態だってことも分かってる。
それは身体というわけではなく、むしろ心。
俺はあいつの心を縛り付けている。
もうすぐやってくる慶太の誕生日。
初めてあいつをこの手で抱いた日。
あんなにも幸せだと感じたのは生まれてはじめてだった。
その日がまたやってくる。
俺はどうすればいいのだろう。
近頃はまともに会話だってしてなかったが、その日の放課後、俺はあいつの教室へ向かった。
教室の前で足がすくむ。
なぜかこの最後の一歩を踏み出せない。
そうこうしていると慶太が教室から出てきた。
「玲人。迎えに来て…くれたの?」
「……まぁ。…帰るぞ」
「…ん」
慶太の隣に立つ。
二人並んで帰るなんていつ振りだろう。
ちらりと隣を伺うと慶太は無表情でまっすぐと前だけを向いている。
今何を考えているのか読めない。
豊かになってた表情だってまた前みたいに無くなってしまったんだな。
「……慶太…あのさ……」
『解放してやれ』という敦の言葉ばかりが頭の中を駆け巡る。
「……何?」
(俺たち別れるか?)
言え。
言ってやれ。
もういいだろ。
慶太のことを楽にしてやれよ。
そして俺自身のことだって……
「玲人?」
立ち止まる俺に合わせて慶太も足をとめる。
そして俺から目をそらさずにこちらを見つめた。
言えよ、玲人!
「あのさ……俺…。っ…お前、もうすぐ…誕生日だろ。」
「…そう…だね」
「その日お前んち行くから。…絶対行くから」
「ぁ……うん。分かった。…待ってるね」
とっさに話題をすり替えた。
言えない。
どうしても言えなかったんだ。
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