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過去~高校生編2
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しおりを挟む-side 水野慶太-
「じゃあ、これで二学期も終わりだ。冬休み中は自分のやる事に責任を持って行動しろよ。じゃあ、また来年!」
二学期が終わる。
そして今日だ。
クリスマス。
僕らの記念日。
あの日以来あまりまともに玲人と話せてはいないけど、でも、約束だもんね。
『その日はずっと一緒にいような。』
昨日から少しずつ料理の用意を始めて、納得いかないと作り直して。
玲人においしいと言ってもらいたいから。
(約束は六時だから、急いで帰って最後の仕上げしないと。)
走って帰って、家に着くなり制服から部屋着に着替えてすぐさまキッチンへとたつ。
昨日下ごしらえしたチキンをオーブンに入れて、タイマーをセット。
玲人の好きな中華もいくつか作って。
時刻5:30
良かった。ぎりぎり間に合った。
色とりどりの料理をテーブルいっぱいに並べて、後は玲人が来るのを待つのみ。
チッ、チッ、チッ……
(遅いなぁ。)
もうすでに六時半を回っていた。
でも必ず来てくれる。
きっといつもみたいに『ごめん、遅れた』って息を切らしてきてくれるんだ。
だけど、七時、八時、九時と時間が過ぎても玲人は来ない。
あんなに湯気が立っておいしそうだった料理も冷め切ってしまってた。
(玲人…来てくれるよね?今日は記念日だよ?)
そんな願いもむなしく時間は無常に過ぎていく。
玲人が来るのを待たずして。
23:45
あと十五分で記念日が終わってしまう。
23:50
23:55
そして…
ピッと時計が日付が変わったことを知らせる。
ゆっくりとスマホに手を伸ばす。
今日だけは催促して来て欲しくなくてずっと放置しっぱなしだった。
玲人の番号を鳴らしてみる。
「……もしもし?」
「ぁ…玲人?僕……」
そのとき、確かに聞こえた。
『玲人…誰ぇ?早くぅ』
僕じゃない人といるんだね。
プチっと電源ごと落とす。
そして、僕は寒い寒い冬の外へと薄着のまま出て行った。
高二のクリスマス。
去年と同じように雪がちらつくクリスマス。
僕は一人ぼっち。
誰もいない。
それはちょうど僕と玲人の一年目の記念日の事。
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