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過去~高校生編2
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しおりを挟む「ウソつくなよ!」
「ウソなんてついてないよ…なんで?なんでそんな怒って…」
「チッ。もういい。俺帰るわ」
「え?待って…だって…なんで?」
引きとめようとする慶太の手を振り払って俺はそこを離れた。
そして、迷うことなくある場所へと向かう。
ピンポーン…ピンポーンピンポーン…
オートロック完備のエントランス口で俺は一心にチャイムを鳴らし続けた。
「…はい」
「俺、開けろ」
「玲人か?ちょっと待て」
次の瞬間、目の前の扉が自然と開いた。
部屋のある五階へとエレベーターで上り、今度は部屋の呼び鈴を鳴らす。
「玲人…急にお前どうした?」
「敦、ちょっと話ある。あがっていいか?」
「あぁ」
ズカズカと上がりこみ、まるで俺のものだというようにリビングのソファにどしっと座った。
「で…話って?なんかあったのか?」
「……敦、お前さ、俺に隠れて慶太に会ったりしてるわけ?」
「は?何、いきなり」
「答えろよ!」
「会ってねぇよ」
「じゃあ、なんでお前のコートが慶太んちのクローゼットにあんだよ!」
バンッ、と目の前のテーブルを思いきり叩いた。
敦はひるむ事も臆する事も全くなく、あくまで普通に振舞う。
「あれは…別に、お前に隠れてとかじゃねぇよ」
「じゃあ、何なんだよ?」
「つかさ、お前にそんな怒る権利とかあるわけ?」
「…関係ねぇだろ」
「あるよ。お前が浮気を止めると思って俺は慶太と距離とったんだよ!なのにお前はひどくなる一方で。
お前知ってんのか?お前が誰か他のヤツと帰る日は、決まって慶太は教室に残ってんだよ。あの寒い教室に一人で!」
「………」
「あんまり寒かったから、その姿が見てて辛かったんだよ。いいだろ、コートくらい…」
知らなかった、そんなこと。
でも申し訳ないという感情よりも、もっと醜い感情のほうが先に込みあがる。
(なんで俺の知らないことを他のやつが知ってるんだよ。)
「今回だけだ…」
「玲人、お前…言ってる事とやってる事があってねぇよ。いい加減どうにかしろよ!」
「うるせぇ!余計な口出すな。…分かってんだよ。でも、あいつは俺のもんだ!」
敦の言ってる事は正しい。
正しすぎる。
そんなこと諭されたくない。
そして今度は敦の家を後にした。
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