僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル

文字の大きさ
上 下
127 / 327
過去~高校生編2

31

しおりを挟む


「ウソつくなよ!」

「ウソなんてついてないよ…なんで?なんでそんな怒って…」

「チッ。もういい。俺帰るわ」

「え?待って…だって…なんで?」


引きとめようとする慶太の手を振り払って俺はそこを離れた。

そして、迷うことなくある場所へと向かう。


ピンポーン…ピンポーンピンポーン…

オートロック完備のエントランス口で俺は一心にチャイムを鳴らし続けた。


「…はい」

「俺、開けろ」

「玲人か?ちょっと待て」


次の瞬間、目の前の扉が自然と開いた。


部屋のある五階へとエレベーターで上り、今度は部屋の呼び鈴を鳴らす。


「玲人…急にお前どうした?」

「敦、ちょっと話ある。あがっていいか?」

「あぁ」


ズカズカと上がりこみ、まるで俺のものだというようにリビングのソファにどしっと座った。


「で…話って?なんかあったのか?」

「……敦、お前さ、俺に隠れて慶太に会ったりしてるわけ?」

「は?何、いきなり」

「答えろよ!」

「会ってねぇよ」

「じゃあ、なんでお前のコートが慶太んちのクローゼットにあんだよ!」


バンッ、と目の前のテーブルを思いきり叩いた。

敦はひるむ事も臆する事も全くなく、あくまで普通に振舞う。


「あれは…別に、お前に隠れてとかじゃねぇよ」

「じゃあ、何なんだよ?」

「つかさ、お前にそんな怒る権利とかあるわけ?」

「…関係ねぇだろ」

「あるよ。お前が浮気を止めると思って俺は慶太と距離とったんだよ!なのにお前はひどくなる一方で。
お前知ってんのか?お前が誰か他のヤツと帰る日は、決まって慶太は教室に残ってんだよ。あの寒い教室に一人で!」

「………」

「あんまり寒かったから、その姿が見てて辛かったんだよ。いいだろ、コートくらい…」


知らなかった、そんなこと。

でも申し訳ないという感情よりも、もっと醜い感情のほうが先に込みあがる。


(なんで俺の知らないことを他のやつが知ってるんだよ。)


「今回だけだ…」

「玲人、お前…言ってる事とやってる事があってねぇよ。いい加減どうにかしろよ!」

「うるせぇ!余計な口出すな。…分かってんだよ。でも、あいつは俺のもんだ!」


敦の言ってる事は正しい。

正しすぎる。

そんなこと諭されたくない。


そして今度は敦の家を後にした。

しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

合鍵

茉莉花 香乃
BL
高校から好きだった太一に告白されて恋人になった。鍵も渡されたけれど、僕は見てしまった。太一の部屋から出て行く女の人を…… 他サイトにも公開しています

処理中です...