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過去~高校生編2
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しおりを挟む-side 桐生玲人-
もうすぐ一年だ。
慶太が俺のものになって一年。
あいつは俺が忘れてるって思ってみたいだけど。
忘れるわけなんて絶対にない。
今だってあの日の事は鮮明に覚えてる。
欲しいものが手に入ったときのあの幸福感。
あいつを幸せにしてやろうと強く思った日。
慶太の作った料理を食べながら、「いつ言い出そう」なんて思ってたっけ。
きっとあんなに緊張したのなんて後にも先にもあれっきりだ。
今年もその日は二人きり。
一緒に過ごそうと言うと、慶太は久々に本当に嬉しそうに笑ったんだ。
「お疲れ。」
「ごめんね?待ったりした?」
バイト終わりの慶太を迎えに行き、一緒に慶太の家へ向かう。
こんな風に過ごすのも久しぶりかもしれない。
記念日が近いからだろうか。
「ただいまぁ、っと。あ、玲人コタツ入ってて?僕、夕飯すぐ作っちゃうから」
「んな、急がなくっていいっつーの」
「でもお腹減ったでしょ?」
「まぁ……てか、俺も手伝うわ」
「あ、本当に?でも手切らないでね、ふふ。」
「切らないって。…悪ぃ、ハンガー借りていい?」
「どうぞ」
自分の上着をかけようとハンガーのあるクローゼットを開けた。
「…これって」
なんだよ、これ。なんで慶太の家にあるんだよ。
間違えるわけなんてない。
あいつのお気に入りのコートだ。
敦の。
俺はどす黒い感情が溢れ出しそうにするを必死に抑えて、そのまま自分の上着をかけキッチンへと戻った。
冷静に。
きわめて冷静に。
「なぁ…最近、敦来たりしたの?」
「え?ここに?来てないよ」
「マジで?」
「……うん、来てない。どうしたの?」
じゃあ、なんで敦のコートがあんだよ!
俺の知らないところで二人で会ったりしてんのか?
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