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過去~高校生編2
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しおりを挟む最近では一人で帰ることも増えてきた。
もちろん一緒に帰る事のほうが多いけど、でも前のように毎日ではなくて。
僕が一人で帰るってことは、玲人は誰かと帰るってことで。
きっと今日もそうなんだろうな。
そういう日は決まって僕は教室に残っている。
わざわざその場面を見るリスクを負いたくないから。
でも冬の放課後の教室はとても寒い。
僕はイスの上に足を乗せ、抱え込むように丸くなる。
そして顔を膝に埋める。
自分の体温で自分を暖めた。
少しは寒さが紛れるような気がしてしばらくそうしていた。
どれくらい経ったのだろうか、ふわりとなぜか全身が温かくなった。
変に思い膝から顔を上げる。
「あっちゃん…」
「慶ちん、寒いでしょ?」
「でも…これ、あっちゃんのでしょ?あっちゃんが寒くなっちゃうよ。僕は大丈夫だから…」
僕にかけてくれたコートをあっちゃんに返そうとするのに「いいから」と押し返された。
「ありがと…」
「…どういたしまして」
そう言いながらあっちゃんは僕の前の席にこっち向きに座る。
「なんかあっちゃん、久しぶりだね?」
「……そうだね。」
お昼の時間にあっちゃんが顔を出さないようになって結構経ってた。
同じクラスなのに、あまり話もしてなくて。
そんなあっちゃんが今僕の目の前にいることになんとなく笑みが浮かぶ。
「慶ちん。なんで何も言わないの?」
「え?」
いきなり突拍子もない質問をされて戸惑う。
「玲人。まだ浮気続いてるんでしょ?」
「あ、あぁ…その事。…うん、みたいだね」
「ちゃんと言ってるの、自分の言いたい事?」
「……言いたい事?」
「するな、止めろ!って。ぶつけてんの?怒鳴って殴って、そんなことしてるの?」
そんなこと…出来るわけないじゃない。
「僕は大丈夫…そんなこと言ってさ、うっとうしいと思われたくないでしょ?」
「慶ちん…」
「ウザイ、要らないって言われたくないから。離れていって欲しくないから。…離したくないから。もう一人は嫌だから…」
「……」
「だから…大丈夫。…ぅん、大丈夫」
ヘヘッ、と笑う僕の握り締められた手に暖かいものが落ちた。
…水?
それはあっちゃんの瞳から落ちた水滴。
「…あっちゃん?なんで泣くの?」
「…っ、くそっ。痛ぇからだよ」
「あっちゃん…」
「慶太の泣けない心が痛いから…。だから…ちくしょ…」
「ふふっ…初めてだね。『慶太』って呼んだの」
あっちゃん、泣かないで?
強がりだけどね、大丈夫だから。
まだね。
もう少しだけは大丈夫だから。
だから、泣かないで?
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