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過去~高校生編2
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しおりを挟む-side 水野慶太-
あの後、一時間目だけサボって二時間目からは授業に戻った。
あっちゃんの言ってること、僕には全然分からなかった。
なんで、あっちゃんが離れていかなくてはいけないのか。
あっちゃんがいたって玲人とは話せるのに。
でも駄々をこねて、あっちゃんのことわずらわせたくなくて、『分かった』といい子のふりをした。
また一人になっちゃった。
玲人に捨てられたくなくて身体ですがった。
でも友達にはどうやってすがったらいいのだろう。
その術を僕は知らない。
ただ去っていくあっちゃんの後ろ姿を黙って見てるしかないんだ。
せっかく三つお弁当作ったのにな。
お昼休みになって、あっちゃんのほうを見ると前の席の子と話をしていた。
(いつもなら真っ先に僕のところに来てくれるのに。)
「慶太」
「……玲人。」
入り口のところに立つ玲人が僕を呼ぶ。
玲人は来てくれたんだ。
あっちゃんの存在を気にしながら、その隣を通り過ぎて玲人の前に立った。
「今日あっちゃん一緒に食べないって…」
「そうか」
別段驚いてる風でもなくただ一度うなずく。
そしてそのまま「ついて来い」とでも言うように何も言わずに歩き出した。
いつもの場所。
いつもの時間。
でもいつもより一人少ない。
「玲人、お弁当」
はい、と手渡す。
そして自分の膝にも一つ。
余ったあっちゃんの分をその横に。
「それ、俺食うわ」
「……いいよ。無理しないで。僕夕飯にでも食べるから」
「俺が食うって」
「…分かった」
少し無理やりあっちゃんのお弁当を奪われる。
もうこのお弁当箱が使われることはないのかな。
その日食べたお弁当の味はほとんどしなかった。
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