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過去~高校生編2
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しおりを挟むーside 水野慶太-
昨日は結局一睡も出来なくって。
朝が来て、今日は玲人の誕生日で。
だるい身体を必死で動かしながら僕は約束していたケーキを焼きだす。
何してるんだって感じがしたけど、でもなぜかやらなきゃいけない気がしたんだ。
僕の気持ちとは裏腹にケーキはすごくうまく焼きあがって甘くていい香りが部屋中に立ち込める。
それが冷えるのを待ち箱につめてから玲人の家へと向かった。
マンションの扉の前で立ち尽くす。
チャイムを押す事ができずにひたすら時間だけが過ぎた。
会いたい。
でも、会いたくない。
いつまでも立ち尽くしてるわけにもいかないので必死に自分を奮い立たせてチャイムを鳴らした。
カチャリと開いた扉から玲人が見えた。
彼の顔を見ることが出来ずに僕は地面に目を落とす。
さっとケーキだけを渡して帰ろうとする僕の腕を玲人がつかんだ。
(怖い!)
まるでそれが知らない人の手のようで僕は思わず振り払ってしまう。
傷ついた表情をする玲人。
それを見て僕心臓もキシリと傷んだ。
急いで駆け出す。
やっぱり来るべきじゃなかったんだと思う。
あんなに愛しかった手なのに。
あんなに暖かかった手なのに。
触れられるのが怖くて仕方なかった。
彼の手から他人のぬくもりを感じるのではないかと怖かったんだ。
自分のアパートに着くと急いで自分の部屋に駆け込み、鍵をかける。
(これで終わりなのかもしれない。)
もう涙は出なかった。
ただ無力感だけ。
そのとき、僕の家のチャイムがなった。
もちろん誰かは分かっていた。
ゆっくりと扉を開けると、やはりそこにいるのは玲人。
急いで走ってきたのだろうか。少しだけ肩が上下してた。
(別れの言葉を言いに来たのかな。)
僕はまた捨てられるのですか?
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