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過去~高校生編2
12
しおりを挟む店から出てマンションへと二人で行き、中へ入る。
俺の部屋が見たいとせがまれたから見せてやった。
そこからはもうなし崩し。
俺が女を押し倒したのか、女が俺を押し倒したのか。
二人して剥ぎ取るように互いの洋服を脱がせ絡み合う。
キスをして突っ込んで腰を振って。
ただ無我夢中で何も考えてなんかなかった。
部屋の入り口で音がするまで。
ガチャンと何かが落ちる音がしてそっちに目をやるといるはずのない慶太がいた。
青ざめた顔してこっちを見てた。
そして、「ごめん」と謝ったのはなぜかあいつでそのまま逃げるように出て行った。
「悪いけど帰ってくれる?」
「え?だってまだぁ…」
「帰れっつってんの!」
文句をぶちぶちと言う女を追い出し、自分はベッドの上でタバコに火をつける。
慶太と付き合い出してから止めていたもの。
あまりに久々でむせた。
最悪な気分。
罪悪感でいっぱいだ。
でも、これが俺。
今までの俺。
そして本当の俺なのかもしれない。
のろのろと服を着て家を出た。
向かった先は慶太の家。
電気は消えていて真っ暗なのが外から分かる。
(まだ帰ってないのか…)
明かりもつけずに泣いてる事なんて知らずにただアパートの外から部屋を見上げる。
ここで待っていたら会えるだろうか?
なんて言えばいい?
どんな顔をしてあいつと向き合えばいい?
その答えなど出るはずもなく、俺はアパートに背を向けた。
その時、腕時計からピピっと音がなる。
十二時ちょうど。
俺が生まれた日だ。
人生で最悪の誕生日の始まり。
きっと慶太はこの瞬間を俺と過ごすために家に来てくれたのだろう。
本当なら今頃二人でベッドの中で笑いあってたはず。
明日…いや、もう今日か。
パーティーなんてあるわけない。
慶太が来てくれる訳なんてない。
何度かあいつのアパートを振り返りそこを後にした。
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