僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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過去~高校生編1

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「ん…なんか…熱いかも」


酔っ払ってしまったのか身体が火照って仕方ない。


「おい!慶太、なにやってんだ」

「何って。だって…熱いんだもん」

上着を脱ぎだそうとする僕とそれを必死に止めようとする玲人。


「慶ちん、ストリップ?わお」

「お前なんだよ、その目?やらしいことでも考えてんのか?…潰すぞ?」


二人ともなんの話をしてるんだろう。

酔いのせいで頭が回らない。

もやがかかったみたいにぼんやりしている。


「じゃあ、俺は帰ろうかなぁ。オジャマ虫は退散するのだ。…どうせ、慶ちん泊まってくんでしょ?」

「あぁ、このままじゃ帰せないし」

「……最初から泊めるつもりだったくせに」

「なんか言ったか?」

「なんにも!!じゃ、帰るわ。慶ちん、またね」


(え、あっちゃん帰っちゃうの??)


ぽーっとしてる僕の前にやって来たあっちゃんがしゃがんで僕の顔をのぞきこむ。

「ほら、慶ちんの誕生日終わるまであと一時間。その一時間くらいは二人っきりにさせてあげないとね?」

「二人?…ぅん、玲人と二人で過ごす」

「ははっ、そうだね。じゃ、慶ちん、また春休み中に遊ぼうね」

「うん、あっちゃん、今日はありがとね」

「なんのなんの!じゃぁね!」


あっちゃんは帰っていってしまった。

玲人はそんなあっちゃんを玄関口まで見送りにいく。

僕はといえば…。


(二人…玲人と二人?…二人??)

その意味を何とか考えようとウンウン唸ってると玲人がお水と一緒に戻ってきた。


「ほら、慶太。水。お前弱すぎ」

「あ…ありがと」

こくり、と冷たい水がのどを通っていくとともに僕の酔いも少しずつ冷めだす。


(ヤバイ…なんか、緊張する。)


二人きりなんてそんなにまれな事じゃないけど、玲人の家でって言うのがあまり無いシチュエーションでなぜか緊張が高まっていく。


「慶太」

「…はいぃ!」

急に呼ばれて声が裏返ってしまった…。


「なに慌ててんの?ははっ!」

「別に…慌ててなんか…」

「お前大丈夫か?顔赤いけど」

「大丈夫。大分戻ってきた」

「そ?」


せっかく落ち着いてきたのにほっぺに触れる玲人のせいで絶対に僕の顔はまた赤くなっていってるはずだ。


「やっぱ、大丈夫じゃねぇじゃん」

「そ…れは…玲人が…触るから…でしょ?」

「俺のせい?」

「うん…玲人のせい」


顔がすごく赤いのも。

心臓がバクバク言ってるのも。

キスして欲しいって思ってしまうのも。


全部全部、玲人のせい。


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