僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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過去~高校生編1

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二月に入ってからより寒さも強まり雪がちらつく事が多くなった。

今日もちらちらと空から舞い落ちてくる雪を僕は教室の窓から眺めていた。


「あ…あのさ、水野!」

クラスの男子。えっと……佐藤君だっけ?いや、鈴木君だったかな?


「あ、いきなりで悪いんだけどさ。この数学の問題教えてくんねぇ?」

と、僕の机にノートを広げる。


「……」

「あ…やっぱ……だめだよな?」

「……別にいいよ。どれ?」


そそくさと片付けて去ろうとする彼のお願いを、普段なら絶対に断ると思われてる僕がOKしたことで彼自身がびっくりしている。


「あ、ほんとにいいの?これ…なんだけどさ…」

「これは…ほら、この問題を少しひねっただけだよ。余弦定理を使って……ね?」

「あ、マジだ!!サンキュ。……てか、ちょっと調子に乗ってほかも聞いていいか?」

「いいけど…」

「すげぇ、助かる!!」


そう言ってパラパラとノートをめくりだすとほかの男子たちも数人寄ってきた。


「鈴木、おまえずりぃよ。水野に勉強教えてもらうなんて」

「な、水野、俺も頼む!!ほら、テストもう来週じゃん?しかも一年生最後のヤツだしさ。下手な点数取れないんだよ」

「俺も!!この前ひどくてさ。今度しくじったら家追い出される!」


わらわらと集まりだす。
そして、みんなして僕に両手を重ねてお願いする。


「「「「な、頼む!!」」」」


「……いいよ、ちょ「あ、マジ!?」「うわ、助かったぁ」「あ、俺ね、物理!」……っとだけなら、だけど。って誰も聞いてないよね?」

各々自分の机やらかばんからノートや教科書を取り出そうと必死になっており、僕の言葉は届いてなどいなかった。





-side 桐生玲人-


「慶太、帰る…ぞ…ってお前何やってんの?」

「あ、玲人!あの…よく分かんないけど…補習?することになっちゃって」


そこには七~八人の野郎どもが机を寄せ集めて慶太を中心に取り囲んでいた。


(何、慶太に近寄ってんだよ、こいつら。)


「あ、慶ちん!って、え?ハーレム??」

「なわけねぇだろ。どこがだよ」


バカめが。


「あ、桐生だよな?悪い。今、水野に勉強教えてもらっててさ」

「そうそう、俺らかなり厳しくてさ」

「今回ヤバイとマジで俺、進学とか…」


俺の知ったこっちゃねぇけど。

でも、ここで慶太を連れて帰ったら俺かなり悪者になるんじゃねぇの?

てか、慶太一人でこの人数は…。


「はぁ。…慶太一人じゃ手回んないだろ?仕方ねぇ。半々で行くぞ。そしてさっさと終わらせる」

「桐生も教えてくれんの?」

「学年一位と二位両方から勉強教わんの?」

「マジ、すげぇ」

「うっせぇ、騒ぐな。さっさと見せろ!」

「じゃ、俺は慶ちんの方に行こうっと」

「敦…お前は俺と一緒だ」

「がびーん!!」


慶太一人をこの群れの中に置いてくなんてそんな虫唾の走…じゃなくて、かわいそうな事できねぇし。

とにかく早く終わらせて二人で過ごしてぇ。


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