僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル

文字の大きさ
上 下
74 / 327
過去~高校生編1

67

しおりを挟む

二月に入ってからより寒さも強まり雪がちらつく事が多くなった。

今日もちらちらと空から舞い落ちてくる雪を僕は教室の窓から眺めていた。


「あ…あのさ、水野!」

クラスの男子。えっと……佐藤君だっけ?いや、鈴木君だったかな?


「あ、いきなりで悪いんだけどさ。この数学の問題教えてくんねぇ?」

と、僕の机にノートを広げる。


「……」

「あ…やっぱ……だめだよな?」

「……別にいいよ。どれ?」


そそくさと片付けて去ろうとする彼のお願いを、普段なら絶対に断ると思われてる僕がOKしたことで彼自身がびっくりしている。


「あ、ほんとにいいの?これ…なんだけどさ…」

「これは…ほら、この問題を少しひねっただけだよ。余弦定理を使って……ね?」

「あ、マジだ!!サンキュ。……てか、ちょっと調子に乗ってほかも聞いていいか?」

「いいけど…」

「すげぇ、助かる!!」


そう言ってパラパラとノートをめくりだすとほかの男子たちも数人寄ってきた。


「鈴木、おまえずりぃよ。水野に勉強教えてもらうなんて」

「な、水野、俺も頼む!!ほら、テストもう来週じゃん?しかも一年生最後のヤツだしさ。下手な点数取れないんだよ」

「俺も!!この前ひどくてさ。今度しくじったら家追い出される!」


わらわらと集まりだす。
そして、みんなして僕に両手を重ねてお願いする。


「「「「な、頼む!!」」」」


「……いいよ、ちょ「あ、マジ!?」「うわ、助かったぁ」「あ、俺ね、物理!」……っとだけなら、だけど。って誰も聞いてないよね?」

各々自分の机やらかばんからノートや教科書を取り出そうと必死になっており、僕の言葉は届いてなどいなかった。





-side 桐生玲人-


「慶太、帰る…ぞ…ってお前何やってんの?」

「あ、玲人!あの…よく分かんないけど…補習?することになっちゃって」


そこには七~八人の野郎どもが机を寄せ集めて慶太を中心に取り囲んでいた。


(何、慶太に近寄ってんだよ、こいつら。)


「あ、慶ちん!って、え?ハーレム??」

「なわけねぇだろ。どこがだよ」


バカめが。


「あ、桐生だよな?悪い。今、水野に勉強教えてもらっててさ」

「そうそう、俺らかなり厳しくてさ」

「今回ヤバイとマジで俺、進学とか…」


俺の知ったこっちゃねぇけど。

でも、ここで慶太を連れて帰ったら俺かなり悪者になるんじゃねぇの?

てか、慶太一人でこの人数は…。


「はぁ。…慶太一人じゃ手回んないだろ?仕方ねぇ。半々で行くぞ。そしてさっさと終わらせる」

「桐生も教えてくれんの?」

「学年一位と二位両方から勉強教わんの?」

「マジ、すげぇ」

「うっせぇ、騒ぐな。さっさと見せろ!」

「じゃ、俺は慶ちんの方に行こうっと」

「敦…お前は俺と一緒だ」

「がびーん!!」


慶太一人をこの群れの中に置いてくなんてそんな虫唾の走…じゃなくて、かわいそうな事できねぇし。

とにかく早く終わらせて二人で過ごしてぇ。


しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

記憶の代償

槇村焔
BL
「あんたの乱れた姿がみたい」 ーダウト。 彼はとても、俺に似ている。だから、真実の言葉なんて口にできない。 そうわかっていたのに、俺は彼に抱かれてしまった。 だから、記憶がなくなったのは、その代償かもしれない。 昔書いていた記憶の代償の完結・リメイクバージョンです。 いつか完結させねばと思い、今回執筆しました。 こちらの作品は2020年BLOVEコンテストに応募した作品です

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

処理中です...