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過去~高校生編1
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しおりを挟む「慶太、おはよう。さっきぶりだな。」
きっちり八時に待ち合わせの場所で俺のことを待っていた慶太に駆け寄る。
「玲人、走ってきたの?顔真っ赤だよ?」
そっと俺の頬に手を伸ばす。
意外と人の目とかを気にしないようだ。
それでもチラチラとこっちを見てくる同じ学校のやつらの視線に気づいてパッと手を離した。
「あ…ごめんね。」
なぜか申し訳ない顔をする。
俺は全然気にしてないのに。
「何が?ってか、学校!急がないと遅刻だぜ。学年のトップ2が揃って新学期早々遅刻するわけにはいかないだろ。」
「うわっ。急がないと。玲人、走るよ!」
腕時計に目をやり、慌てて慶太は走り出した。
思いの外、慶太は抜けている。
「ちょっと、待てよ慶太。置いてくな!」
そしてこれまた予想外なほど足の速い慶太を俺は追いかけていった。
「ふぅ、良かった。間に合ったみたいだね。」
「あぁ、ギリギリセーフってとこかな。」
下駄箱で一息つき上履きに履き替える。
「じゃあ、昼飯の時な。俺、こっちだから。」
「あ、うん。…また、あとでね。」
離れがたい。
俺も慶太も立ち止まったまま動き出そうとしない。
「玲人、もう行ってよ。」
「いや、慶太が先に行って。」
「ずるい…。」
「お互い様だろ?」
それじゃあ同時に、ってことにして別々に歩き出した。
でもやっぱり離れたくなどなくて。
小指同士が絡まりあう。
俺が右、慶太が左。
逆側に進むことで少しずつ触れている部分が減っていき、最後にはプツリと切れた。
昼までたった数時間なのに。
あまりにもこれまでが一緒に居すぎたものだから。
その数時間がまるで数日のように感じられてしまう。
(くそっ。何で同じクラスじゃねぇんだよ。)
理不尽な憤りを感じているとポンッと肩を叩かれた。
「おっはー!」
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