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過去~高校生編1

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中華サラダにスープと酢豚。チャーハンも作って。

少し作りすぎたかなぁ、って思うけど玲人はいつも残さず食べてくれるから。

だから気がつくといつもたくさん作ってしまうんだ。


ご飯が終わったら先に僕がお風呂に入って、次に玲人が入って。

その間に僕は洗濯物を畳んでしまう。

玲人が上がってきたら二人でおしゃべりして、テレビ見て。

そして一組しかない布団に二人してもぐり込む。

「狭いね。」
「慶太が小さいから大丈夫だよ。」
「なにさ、自分がちょっと背が高いからって。」

いつもいつも同じ内容。

少しだけむくれる僕に『ごめん』と玲人が笑いながら謝って。

その後はぎゅっと抱き締めてくれる。

その温もりを感じながら僕は眠りにつくんだ。



「おはよう。」

「……はよ。」

目が覚めても玲人はまだそこにいて、また新しい一日が始まる。

寝ぼけまなこの玲人をしばらく見つめて僕は布団から出ていった。


はずだけど。

手を引っ張られてまたもとの位置に逆戻り。


「もうちょっと。まだ七時だろ?」


耳に届く彼の声は、寝起きのせいかハスキーで、セクシーで。

真っ赤になった顔を見られたくなくて僕は彼の胸に顔を埋める。


「慶太。顔見せて?」


そうお願いされてしまえば断れるわけもなくて。

おずおずと顔を上げるとそこには満面の笑みを浮かべた玲人。


「なんか、ずるい。」

「何が?」

「分かんないけど、なんか…ずるい。」

「なんだそりゃ。」


笑い続ける玲人から離れ、今度こそ布団から飛び出しキッチンへ向かった。


「ごめん。…怒ってる?」

僕が機嫌を悪くしたと思ったのか急いで僕の後を追ってきた。


「…怒ってない。」

「本当に?」

「……怒ってない。」

「そうか。」


そう言ってるのに玲人の手はいつもの定位置に来る。

抱き締められる手に力がこもってしまえばもう僕に出来ることなんて何もない。


「……今日は、大晦日なんだからね。玲人もお掃除手伝ってよ?」

「分かってる。」


ちょっとだけ嫌がらせ。

と思ったんだけどそんなの玲人には通用しないみたいだ。

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