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過去~高校生編1
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しおりを挟むーside 桐生玲人ー
最近告ってきた女とホテルに行った。
抱いた。
あいつが慶太と同じクラスだっけ事さえ知らないくらいの存在だった。
俺は慶太が好きで。
その思いは膨らみ続けて。
今では限界まで空気の入った破裂寸前の風船のようになっている。
少しでも衝撃が与えられればすぐに破裂してしまう。
そこまで来ていた。
無邪気に笑う慶太に自分の汚い欲望をぶつけてしまいたい。
あの白い首筋に吸い付いて自分のものだと言う証を残したくなる。
抱き締めて。
押し倒して。
抱いて。抱いて。抱いて。
そんな時にあの女が寄ってきたから。
「処理にくらいはなるかな」という軽い気持ちで。
「セフレならいい。」と飛び付いた。
正直。
すっきりした。
性欲が満たされて慶太の前でも冷静を保っていられた。
もっとよく考えるべきだった。
慶太に気付かれないなんて確証はどこにもないんだってこと。
こんな女のために慶太との時間が減るなんて。
「ねぇ、私のお弁当食べる?これからは私が作ってあげるからね。」
俺の腕に絡み付く女を突き飛ばした。
きゃっ、とそいつはよろけ。
一瞬にしてクラス中が静まり返った。
「誰と誰が付き合ってるって?」
怒りを含んだ抑揚のない声に女の顔はひきつる。
「お前なんて単なるセフレだよ。最初からそう言ったろ。それ以上なんてあると思ってるわけ?」
そう言いながら口角が上がる。
涙を浮かべて俺を見上げるこの女に対してなんの感情も湧かないことがなぜかすごくおかしかった。
「それもこれで終わりだけど。もう二度と話しかけんな。」
そう吐き捨てて教室をあとにした。
慶太を探さないと。
分かんねぇけど謝らなきゃいけない気がする。
「これからも弁当作ってくれ」って言わなきゃいけない気がする。
じゃないと。
あいつが離れていく。
そんな気がする。
いつも弁当を食ってる場所へ全速力で走っていった。
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