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過去~高校生編1

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それから先のことはあまり覚えていない。

なんだか自分だけがみんなとは別の空間にいるような不思議な感じがして。

何も考えることができなかった。


「……い…ぉい……いた…慶太!」


呼ばれていることに気づきハッと顔をあげると玲人とあっちゃんが目の前にいた。


「昼休みだけど、お前どうしたの?」


玲人にそう言われてもどんな顔をしていいか分からない。

笑えばいいのか。

傷ついた顔をすればいいのか。

泣けばいいのか。

それともなじればいいのか。


僕にそんな資格があるわけないのに。



「あ~っ。玲人だぁ!」

あの女だ。

玲人の存在に気づくなりすぐに駆け寄ってくる。


マスカラで無理矢理伸ばされたまつげ。

目元はアイラインで黒いし。

唇はグロスでギラギラしている。

気持ち悪い…


嘘つき。

これは単なる嫉妬。


本当は。

背が低くて目がくりっと大きくて。

ぽってりした唇はとても女性らしい。

なんだか庇護欲を掻き立てられるとても魅力的な女の子だ。


「ね、玲人。お昼私と食べようよぉ。いっつも誘ってるのに!断られてばかりで寂しいんだからね。」

パチパチと瞬きをしながら必死のおねだりアピール。


「は?何で俺がお前と食うんだよ。」

「いいじゃない。一緒に食べたら?」

「……慶太?」


正面からしっかりと玲人のを見据える。

口から出た声は自分でもビックリするほど感情を持たない冷たいものだった。


「だって付き合ってるんでしょ?ほら、僕はあっちゃんと二人で食べるから。
あ、これからはもうお弁当もいらなくなるね…ぁはは……。」


この状況に理解が追い付いていないのか。

玲人は意味わからないと言う顔をしつつそれでも何かを言おうと口を開こうとした。

でも僕は彼の言葉を聞くのが怖くてあっちゃんの手を引いて教室から逃げ出した。


ちゃんと笑えてたかなぁ。


「やったぁ。ありがと、水野くん!」

彼女の声が後ろから聞こえたけど振り返ることも出来なかった。


きっと僕は。

すごくみっともない顔をしていたから。

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