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過去~高校生編1
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しおりを挟むーside 水野慶太ー
玲人が立ち去った方向を見る。
行ってしまった。
最近なんかダメだ。
普通にしよう。普通にしよう。
そう思えば思うほど普通になんて出来ない。
顔がこわばってしまう。
玲人の顔をまともに見ることが出来ない。
「慶ちん、気にしなくていいよ。」
あっちゃんは落ちたアスパラを拾ってひょいと口に放り込んだ。
「汚いよ、あっちゃん。」
「ん?大丈夫だって。俺の中では三秒ルールなのだ。」
「……また、作ってこないとだね。」
「そうだね。今度は玲人にも食べてもらわないと。」
そう言ったあっちゃんは。
本当に穏やかに笑っていて。
なぜか僕は泣きたくなった。
きっと。
あっちゃんは気づいてるんだ。
僕が目を背けているこの気持ちの正体に。
「ねぇ、あっちゃん…僕……」
「ん?」
「あの、あのね…僕…」
「大丈夫。焦らなくてもいいんじゃない?」
「……うん、ありがと。」
「へ、何が?変なの~。」
(ありがとう、あっちゃん。)
二度目の感謝が言葉になることはなかったけど、僕は精一杯の笑顔をあっちゃんに送った。
頬を撫でる風が少しずつ冷たくなってきた秋の始め。
僕はようやくこの思いを認めることが出来たんだ。
僕の初恋は高校一年の秋でした。
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