僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

過去～高校生編1

33

「なんだよ、お前。別にいいじゃん、まつげくらい。その辺の女んに言ったら殴られるぞ？」

僕を追いかけてきた玲人がこぼす。


女ト比ベルンダ…


違う、違う、違う。


「…僕はね、男らしくなりたいの！そのうちムキムキのマッチョになるんだから。」

一瞬浮かんだ思いをすぐに打ち消して玲人に力こぶを作ってみせる。


「ふはっ！お前出来てないから。慶太はそのままでいいと思うけど？」


そんなこと言うな、笑うな、触れるな。


さっと玲人のかわして図書館へ駆け込んだ。


「はい、ここからは私語禁止なんだからね。」

「おす！」



勉強を始めて一時間くらい経っただろうか。

出入りの少ない図書館には今日も人はまばらで。

玲人との距離がとても近くに感じる。

彼の息遣いでさえ気になるほど。


集中できない。

こっそり玲人の方に視線を向けると意外なほどノートにペンを走らせていた。


僕も教科書へと目を戻す。

でも五分もしないうちに動きは止まってしまう。


息がつまる。

酸素が薄いのではないかと思わせるほどに濃密な空気。


違う。


少し骨ばった玲人の長い指に目が行く。


違う。


男らしくボコりと出てる喉仏。


違う……嫌だ。


薄い唇、高い鼻、切れ長の奥二重の瞳。


ダメ、やだ。気づきたくない！



そして絡み合う視線。

「どうした？」と声をかけられる。


こんなの違う。

違うんだ！