僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

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「ねぇ、なんで?何でこの部屋に彼を呼んだの?」


だんまりを決め込む玲人に問いかける。


「…ってか、別によくない?ヤってること一緒でしょ、ここでもラブホでも」


滅多に反論しない僕が詰め寄ったことに少しイラッと来たらしく、吐き捨てるようにそう呟いた。




ねぇ。
違うよ、玲人。

全然違うんだよ。


ここだけは僕と玲人のだけの場所であってほしかったんだ。

二人だけの、他の誰にも侵されないそんな場所があるんだと。
そう自分に言い聞かせてきた。

それが特別なんだと……


それだけを心の拠り所にして、毎日1分1秒を僕が生きていること。
玲人は知らないんだね。

僕には他に何もないんだよ?


ハァ、と。
めんどうくさそうにつかれるため息。

「んじゃさ、別れる?」

ニヤリとした笑みを浮かべ、「どうせ無理だろ?」って感じで僕を見る。


今まで何度も何度も玲人は浮気をしてきた。

でも、僕はまだこうして彼といる。

浮気されても何も言えなかった僕。

別れるなんて出来なかった僕。


でも。でもね?

今日は今までと違うよ。


こんな事くらいでって言われるかもしれない。

玲人の言う通り。
ヤっていることはどこだって違わない。


でも…


「…そうだね。それもいいのかもね」

ポツリとそう漏らす。


予想外の反応に言葉を失っている玲人の横を通り、僕は家を出た。




ねぇ、玲人。

雨が降ってきたよ。

ポツポツと。
空から落ちる水の粒が僕を濡らしていく。

ねぇ、玲人。

冷たいね。

激しくなっていく雨。
ずぶ濡れになっていく僕。


ねぇ、玲人。

出会ったあの頃に戻りたいよ。

そして、あの頃の僕に言うんだ。


桐生玲人の事を好きになるな、って。


でもきっと無駄だね。

僕は誰に止められても君を好きになる。


ねぇ、玲人。

君は僕に恋することの温かさを教えてくれた。

愛されることの幸福感をくれた。

愛することの切なさを教えてくれた。

そして、裏切られることの痛みを…



ねぇ、玲人。

君がどうしようもなく好きだよ。

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