僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル

文字の大きさ
上 下
3 / 327
プロローグ

2

しおりを挟む
ようやく現実へと戻って来た二人は、今更ながら自分達がずっと見られていたということに気づいたようだ。


「えっ?っ…だれ?」


玲人に尋ねる彼は、先程までの激しい行為のせいか、はたまた見られたことに対する羞恥のせいか。
未だに顔が上気しており頬もピンクがかっている。


「慶太……お前。何で今日はっ…」


かわいい彼の声で寝室の入り口へと目が行き自ずと邪魔物の存在に気づく。
僕がいることに対して僅かばかりの驚きを見せた玲人は急いで洋服を身に纏おうとする。


ごめんね。今日は遅くなる予定だったもんね。


声にならない謝罪をするのはなぜか僕だった。


桐生玲人。僕の恋人。
たった今、僕以外の人を抱いていた男。

今までもずっとそうしてきた男。

そしてこれからもそうするであろう男。



先程までベッドにいた彼を玲人は帰し、リビングのソファに腰かけていた僕へと近づく。


「……」

「…」


お互いに言葉が出ない。

それは当然のこと。

自分の恋人の浮気セックスを見た男と、自分の恋人にそれを見られた男。


「慶太…今日早かったんだな」


きっと沈黙に耐えきれなかったのだろう。

玲人が先に言葉を発する。


「うん。バイト、急にキャンセルになっちゃって。…連絡すればよかったね」

「……」


そしてまたやって来る静寂。


「玲人、ここは、僕と玲人の家だよね?」


顔の表情をピクリとも動かせない程に僕は絶望していた。

ここは。ここだけは。
二人だけのものであって欲しかったのに。

この家だけはそうだと思っていたのに。


最後の希望、だったのに。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。 1日2話ずつ投稿します。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

その日君は笑った

mahiro
BL
大学で知り合った友人たちが恋人のことで泣く姿を嫌でも見ていた。 それを見ながらそんな風に感情を露に出来る程人を好きなるなんて良いなと思っていたが、まさか平凡な俺が彼らと同じようになるなんて。 最初に書いた作品「泣くなといい聞かせて」の登場人物が出てきます。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。 拙い文章でもお付き合いいただけたこと、誠に感謝申し上げます。 今後ともよろしくお願い致します。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

紹介なんてされたくありません!

mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。 けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。 断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

処理中です...