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第六章.Let's get married

78.銅像の次は

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 終わった。全てが終わった。土壇場でシュバルツに裏切られて、燃え尽きたよ。。。
「お嬢さん、よく頑張ったね」
「先生のおかげだよ。ありがとう」
 ジョエルは、私にくっついて眠っている。重くて動けないし、このままいたら、きっと骨を折られる。ピンチだ。だが、無事にこちらに連れてくることはできた。満足である。
 もちろん、タケルもいるよ。タケルは、外に向かって毛を逆立てている。どうした?
 先生とタケルに手伝ってもらって、ジョエルを引き剥がし、ドレスを着替えてきた。やっと動ける! ドレスは苦手だ。平服万歳!
 チャペルに戻ったら、ジョエルも起きてたから、もう日常だ。良かった。

 と、済ませたいところだが、まだ懸念事項があった。シュバルツが、会う度に謎の美術作品を残す件だ。壁画、銅像ときたら、次は何だ? まさかの4D作品はないと思いたい。科学技術が劣っていても、魔法のある世界だ。魔力も技術力も持ち合わせたシュバルツは、何をするかわからない。どうせ手を繋いでいる何かだ。シュバルツだけなら構わないが、私を入れないで欲しい。
 外に出るのが気が重い。だが、いつまでもここにいるのも嫌だ。諦めて外に出た。

 外には、シュバルツが立っていた。
 また転移しただと? 早すぎじゃない? なんで?
「遅いぞ、シャルル!」
「博士!」
 え? 先生もジョエルもタケルもいた。ということは? え?
「会いたかった。また待たされた」
 シュバルツが、こっちに来た? マジか! どうしてだ。
「どうやって来たの?」
「そこの鳥頭にできて、俺にできないことなどあるはずがない。もう少しマシな方法で、来てやった」
 後ろから風が吹いた。後ろを向くと、いたハズのジョエルとタケルがいない。前方でシュバルツと戦闘を始めた。
「2対1はズルイよ。やめなさい! こら、やめてってば! 先生、止めてよ。シュバルツが死んじゃうよ」
「死にはしないだろう。よく見るといい。博士は楽しそうだ」
 確かに、シュバルツは満面の笑顔で、2人の攻撃をいなしている。
 え? ジョエルより強いの? タケルより強いの? シュバルツに苦手な物とかないの? ちょっとどうなってるの?
「シュバルツって、戦う博士なの?」
「さてね。オレも初めて見たよ。知らないよ」
 しばらく座って先生と観賞してたけど、お腹がすいたから、帰り出したら3人もついてきた。

「シャルル、俺を置いていくな」
「もうお腹空いたんだよ。言うこと聞かない人たちは、いつまでも勝手にやってればいいじゃん」
 制止されても、気にせず歩き続けた。今日のごはんは、なんだろな。作るのダルいな。買い食いがいいな。
「ルルーは、本当にこのままでいいの?」
「良くないよ。お腹減ったよ」
 がっつり系と言えば肉だが、ここはお魚が美味しい地域だ。お魚さんは、捨てがたい。カニやエビや貝もいる。焼いただけで美味しい。醤油があったら最高なのに!
「お腹の具合より、結婚の方が大事だろう!」
「そりゃあ、まあ、そうだろね。飢餓状態でないなら、そうだろうね」
 フルコースが食べれるなら、披露宴を開催しちゃおうかな、と思うくらい腹ペコなんだよ。
「ならば、こいつを抹殺して然るべきだろう?」
「なんでよ。仲良くしてよ」
「くくく。シャルルが俺と結婚したから、怒ってんだよ」
「へー、そうなんだー」
 ん? 私が結婚した?
「いつ?!」
「結婚式の最中に」
「なんで?」

 私は、初めてこの世界の結婚について知った。2人以上の人間が、結婚しましょうね、と同意したら、結婚成立らしい。同性同士でも、10人くらい一緒でも、満場一致なら結婚できるらしい。うちはお父さんは2人で、お母さんが3人なんだー、みたいな会話も有り得るんだってよ。そんな仲良し滅多にいないから、一夫一妻が多いけど。
 そこに来て、結婚式の誓いの言葉だ。あれは確かに結婚に同意する言葉だった。なんか微妙にシュバルツの誓いと私の誓いは違ったが、私の同意を得やすいように改変したのだろう。なんでそんなことに知恵を回すのか。前後のシュバルツの言葉は、ダメ押しだった。なんであの状況で結婚式を続けてるんだろう、とは思っていたが、私をはめるためだったのか。
「私の出身地では、書類を作成して役所に提出しないと結婚が成立しないんだよ。口約束じゃあ、精々婚約止まりだよ」
「シャルルは、シュバルツの妻だ。シュバルツは亡くなっているから、未亡人になるな。変な男には、『亡き夫が忘れられないのです』とでも言えばいい」
 なんで誇らしそうな顔をしているんだ。ムカつくな。意味わかんないよ。
「生まれた時から、未亡人じゃん」
「俺は、二代目シュバルツとして、ここで生きていく。しばらくは、シャルルの兄だ」
「弟だよ」
 結婚云々より、譲れないのに。
「肉体年齢も、精神年齢も圧倒的に俺が上だ。諦めろ。どうしたって、妹のワガママを聞いてやってる兄にしか見えない」
「そんなことないよ。どこの家の姉も、いずれ弟に身長を抜かれる定めなんだよ」
「あー、はいはい。しょうがない妹だな」
「生意気な弟、むかつく!」


 屋台飯を食べて、先生の家に戻ったら、今度はシュバルツとキーリーがケンカを始めた。
「先生、家が壊されちゃうよ」
「建物の被害だけなら、魔法で直すよ。それ以外は、本人たちに償わせればいい」
 良い訳がないが、先生は諦めていた。
「ルルー。何でそんなに落ち着いているの? 奪い返して、って言っていたのに」
「え? 私は、ジョエルを迎えに行ったんだよ。ジョエルをこっちに戻すのが、最優先じゃん。後は些事だよ。
 確かに、シュバルツと結婚するつもりも予定もなかったけど、二代目シュバルツが夫じゃなくて、兄なら特に影響ないよね。とりあえず、お風呂入って、寝たいなー、って思ってるんだけど、もう寝てもいいかな?」
 物理的にも気持ち的にも、お腹がいっぱいになったから、もう眠い。私は娘なんだし、お父さんに任せておけばいいんじゃないかな。
「そうは言っても、アレは初代シュバルツ本人だろう。気が向いたら、自分は初代だ、夫だって言い出したら、どうする?」
「えー、そうなの? それは男らしくないかなぁ。ちなみに、離婚はどうやるの?」
「離婚したいと宣言すれば良い」
「親権は生母に限られる。争点は、財産権くらいだね」
「雑っ! 結婚より離婚が軽いって、おかしくない? でも、そんなにお手軽なら、誰と結婚しても問題ないね。余計に、どうでもよくなったよ」
「それなら、オレと結婚しよう。この家も風呂も君のものだ!」
 一番あり得ない先生の出馬だ。なんで、そんなに自信満々なのか。
「いらないよ。お兄ちゃんに新しいの作ってもらえばいいじゃん。きっと変態的なとんでも機能のついた最新家を作ってくれるよ」
 適当すぎる説明だと、結婚式場みたいのが出来上がるだろうけども。
 私は、考えることを放棄して、ベッドに入ったのだけど、騒音がうるさくて眠れなかった。
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