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第一章.美女と熊と北の山
10.閑話、キリンジ視点
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俺は、キリンジ。最近、大人の仲間入りを認めてもらった黄色熊だ。
大人になって、ブイブイ言わせる自分をずっと夢見てきたが、近頃世の中物騒になって、出かけるのも止められるようになってきた。俺、大人になったんだぜ? 散歩くらい好きに歩いていいだろう。もうママの許可はいらないハズだ。
どこへ行っても道を譲ってもらえるし、俺は、俺たちが森の最強種なんだと信じて生きてきた。だけど、毎日仲間が何頭もやられている。人間というのが外からやって来て、俺たちを狙っているらしい。
少し前まで、人間は獲物の1つだった。たまに返り討ちにされるヤツもいるし、骨が面倒臭くて人気はないが、数年に一度くらい食べる機会もあったらしい。だが今は、近寄ってはいけない種とされている。ピンチに陥ってからの威嚇も禁止だ。とにかく逃げることを推奨されている。特に、黄色頭と黒頭は気をつけろ、という話だ。人間でも、黄色が1番強いのかと、少しいい気分になった。
「昨日は、赤色熊のところが、大分やられたらしいよ。必死で逃げてきて、群れで戦おうとしたけど、群れごと壊滅したんだって。何頭か逃げてきてこの群れにいるけど、優しくしておやりよ」
とんでもない怪物が現れたようだけど、俺はまだ実感が持てずにいた。赤色のヤツらは、黄色に比べれば小型だ。最強種とは呼ばない。俺は、悪い人間をやっつけて、仲間に賞賛される自分を想像した。悪くないんじゃないか? そいつを仕留めれば、俺がボスになることも可能かもしれない。成熊になって早々にボスになるなんて、聞いたことはない。俺、すげぇカッケーじゃん。
遠くまでは行かない約束で、群れを離れた。約束なんてウソだ。俺は、黄色頭か、黒頭を探す。そして、頂点に立つのだ。
だがしかし、人間を見つけるのは簡単ではなかった。赤色熊のナワバリに来てみたが、まったく気配がない。あんな小さい生き物を探すなんて、無謀だったのだ。人間は、森に住んでいないと聞いたから、住処に戻ったのかもしれない。森を出て探すのは、億劫だな。なんで俺が、そこまでしなくちゃいけないんだよ。
馬鹿らしくなって群れに帰ろうとしたら、派手な物音が聞こえた。何だ? 何かが争っているような音が聞こえる。群れの方だ。ケンカか? ボス争いか? 俺がいない間に面白いことするなよ!
ちょっと離れただけなのに、群れは大変なことになっていた。俺の顔馴染みが、バタバタと倒れている。最強種の黄色熊が!
その中心には、人間が立っていた。黄色頭だ。探していた、黄色頭だ。狩ってやる! 皆の仇だ。
まだ戦闘は終わっていなかった。俺は、即座に援護に向かうが、ママに止められた。
「お前じゃ無理だよ。早くお逃げ。ママが時間を稼ぐから、安心しておいき」
そう言われる間にも、仲間たちは倒れていく。黄色頭の動きは異常だった。離れているのに、早くて目で追えない。ちょっと触れただけで仲間は倒れる。あれは無理だ。あれは倒せない。
黄色頭が、こちらを向いた。もう逃げられない。終わった。
「ママ、嫌だよ。俺一頭じゃ、逃げられないよ。せめて一緒に!」
「あなたが逃げおおせたら、私も行くわ。だから、先にお行き」
ママと泣きながら話していたら、黄色頭は、上を向き、下を向き、仲間を背負って出て行った。俺たちは、助かってしまった。嵐のような人間だった。
俺は、群れのボスになった。雄熊が俺しか残らなかったので、強制的にボス熊に繰り上がった。若くしてボスになる夢もあったが、求めていたのはコレじゃない。
今は、散り散りになった仲間を探している。雄熊が1頭見つかれば、俺はボス引退になるだろう。仲間を大量に奪われたため、何頭残っているのかも不明だが、少しでも多く見つけられるといいと思う。
大人になって、ブイブイ言わせる自分をずっと夢見てきたが、近頃世の中物騒になって、出かけるのも止められるようになってきた。俺、大人になったんだぜ? 散歩くらい好きに歩いていいだろう。もうママの許可はいらないハズだ。
どこへ行っても道を譲ってもらえるし、俺は、俺たちが森の最強種なんだと信じて生きてきた。だけど、毎日仲間が何頭もやられている。人間というのが外からやって来て、俺たちを狙っているらしい。
少し前まで、人間は獲物の1つだった。たまに返り討ちにされるヤツもいるし、骨が面倒臭くて人気はないが、数年に一度くらい食べる機会もあったらしい。だが今は、近寄ってはいけない種とされている。ピンチに陥ってからの威嚇も禁止だ。とにかく逃げることを推奨されている。特に、黄色頭と黒頭は気をつけろ、という話だ。人間でも、黄色が1番強いのかと、少しいい気分になった。
「昨日は、赤色熊のところが、大分やられたらしいよ。必死で逃げてきて、群れで戦おうとしたけど、群れごと壊滅したんだって。何頭か逃げてきてこの群れにいるけど、優しくしておやりよ」
とんでもない怪物が現れたようだけど、俺はまだ実感が持てずにいた。赤色のヤツらは、黄色に比べれば小型だ。最強種とは呼ばない。俺は、悪い人間をやっつけて、仲間に賞賛される自分を想像した。悪くないんじゃないか? そいつを仕留めれば、俺がボスになることも可能かもしれない。成熊になって早々にボスになるなんて、聞いたことはない。俺、すげぇカッケーじゃん。
遠くまでは行かない約束で、群れを離れた。約束なんてウソだ。俺は、黄色頭か、黒頭を探す。そして、頂点に立つのだ。
だがしかし、人間を見つけるのは簡単ではなかった。赤色熊のナワバリに来てみたが、まったく気配がない。あんな小さい生き物を探すなんて、無謀だったのだ。人間は、森に住んでいないと聞いたから、住処に戻ったのかもしれない。森を出て探すのは、億劫だな。なんで俺が、そこまでしなくちゃいけないんだよ。
馬鹿らしくなって群れに帰ろうとしたら、派手な物音が聞こえた。何だ? 何かが争っているような音が聞こえる。群れの方だ。ケンカか? ボス争いか? 俺がいない間に面白いことするなよ!
ちょっと離れただけなのに、群れは大変なことになっていた。俺の顔馴染みが、バタバタと倒れている。最強種の黄色熊が!
その中心には、人間が立っていた。黄色頭だ。探していた、黄色頭だ。狩ってやる! 皆の仇だ。
まだ戦闘は終わっていなかった。俺は、即座に援護に向かうが、ママに止められた。
「お前じゃ無理だよ。早くお逃げ。ママが時間を稼ぐから、安心しておいき」
そう言われる間にも、仲間たちは倒れていく。黄色頭の動きは異常だった。離れているのに、早くて目で追えない。ちょっと触れただけで仲間は倒れる。あれは無理だ。あれは倒せない。
黄色頭が、こちらを向いた。もう逃げられない。終わった。
「ママ、嫌だよ。俺一頭じゃ、逃げられないよ。せめて一緒に!」
「あなたが逃げおおせたら、私も行くわ。だから、先にお行き」
ママと泣きながら話していたら、黄色頭は、上を向き、下を向き、仲間を背負って出て行った。俺たちは、助かってしまった。嵐のような人間だった。
俺は、群れのボスになった。雄熊が俺しか残らなかったので、強制的にボス熊に繰り上がった。若くしてボスになる夢もあったが、求めていたのはコレじゃない。
今は、散り散りになった仲間を探している。雄熊が1頭見つかれば、俺はボス引退になるだろう。仲間を大量に奪われたため、何頭残っているのかも不明だが、少しでも多く見つけられるといいと思う。
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