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18.強盗に襲われる

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 村祭りにむけて、鍛錬の日々を過ごしていたら、ある日、家に強盗が入ってきた。黒髪黒瞳の目付きの悪いおじさんと、金髪翠眼のキレイな見目のお姉さんの2人組だった。急に、玄関の扉を蹴破って入って来て、剣をつきつけてきた。私たちは、何もしていないのに、ひどい人たちだ。
「うちの息子を返してもらおうか」
「殺されたくなかったら、速やかにその子を離しなさい」
 なんと、強盗の狙っている品は、私だった。私なんて食べても美味しくないよ。なんで!?

 お姉さんは、意味もなく、テーブルを叩き切った。怖い!
「ダディ、助けて! マミィ、怖いよ。嫌だよ。嫌だよ!」
 私は、泣きながら、必死でマミィに抱き付いた。
 このままだと、私は連れて行かれてしまう。人攫いに捕まってしまう。私なんて、なんの価値もないのに、なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ!
「、、、琥珀? 助けに来たよ。見つけるのが遅くなって、ごめんね。こっちに来れるかな?」
「シャルルの記憶障害が、遺伝しただと?」
 一生懸命、マミィに貼り付けていたのに、黒おじさんに力強くで、ひっぺがされた。
「ぎゃー! 嫌だー!! 助けて!」
 ダディとマミィは、涙を流してこちらを見ているが、助けてはくれなかった。そうだね。金髪お姉さんに斬られてしまうくらいなら、助けてくれなくていい。自力で脱出しよう。
「大地の精霊様。ダディとマミィを、、、」
 守って欲しかったのに、魔法が発動する前に、視界が真っ白に消し飛んだ。


 次に視界に入ったのは、緑の肌が美しいエスメラルダだった。ちょっと見ぬ間に、また改造されてしまったらしい。マジで、やめて欲しいんだけど、なんで人間にしなきゃいけないの?
「おかえり、琥珀。身体の具合は、どうだ?」
「、、、、、」
「エスメラルダのことも、忘れたことにするつもりか?」
「まったく記憶に御座いませんが、美しい人に今一目惚れを致しました。なんで、父さんが迎えに来てくれなかったのですか。ダディは、無事ですか? 死んでいたら、許しませんよ」
 お父様までは騙せたようだったのに、父さんには通じなかったようだ。残念だ。
「俺も行ったんだが、あいつらの速さに追いつけなかっただけだ。悪かったな。だが、小人を殺す前には間に合ったから、一応、止めておいたぞ」
「小人?」
「あれは、イタズラ小人のトロルだ。知らないのか?」
「存じません。あれだけ大きくて小人とか、聞いてもまったく納得できません」
「お前よりは大きいかもしれないが、俺たちと比べたら小さいだろう?」
「父さんたちが、大きすぎるのでしょう。久しぶりに見たら、巨人が来たかと思いました。マミィは、ママと同じくらいでしたよ。小人ではありません」
「ナデシコは、人間じゃないからな。シャルルは、頭ひとつ大きいだろう」

 私は、取り替え子の被害にあっていたそうだ。
 ダディは、私を誘拐して、私の代わりにダディの子を置いて行ったらしい。そんなことをして何が楽しいのかはわからないが、トロルの習性の1つだと、納得のいかない説明を受けた。
 被害と言われたが、別に私は、被害らしい被害はなかった。ちょっとごはんが寂しかったくらいで、むしろどこか充実していた。あのままでも、良かったと思う。怒られたくないので、言えないが。
 迎えに来てくれたのは、嬉しいような気持ちもないではない。ここ最近の色々を考えると、捨て置かれているのだろう、と思っていた。そして、迎えに来てくれたのは、私が母の子だからだ、という考えを捨て切れない。母をこちらに戻すために必要で、母に嫌われないために大事にしてるフリをしないといけないのだろう。少なくとも、お父様は絶対にそうだ。
 トロルは、駆除モンスターではない、と聞いて安心した。緑小鬼は鬼だけど、イタズラ小人は人だと言われたのは、本当に納得いかなかった。私から見たら、どっちも大して変わらない。


 後日、お父様を連れて、ダディのところに謝りに行った。ダディが私を誘拐した犯人だから、謝る必要はないと言われたのだが、見せたいものがあると、意地になって食い下がった。
「ダディ、マミィ、ただいま!」
 玄関扉が壊れたままなので、勝手に中に入ったら、ダディとマミィと子ども? がいた。
「それが、お前の代わりに、うちに置き去りにされていた子どもだ」
 お父様は、忌々しいような口調で言っているが、嬉しいことがあってもそんな風だから、気にする必要はない。
 私の身代わりの子は、身体付きは細いのに、骨と筋肉がないかのようにかなりぶよぶよとして、目や口がどこにあるやら今ひとつわかりにくい顔立ちをしていた。お父様に殴られたから、とかでないといいけれど。
「なんと、私に瓜二つではないですか! でも、惜しかったですね。髪の色が全然違います。私の頭は真っ黒で、そんなにキレイな弁柄色ではありません」
「どこまで目が腐っているんだ!」
 お父様は一人で怒っていたけれど、ダディとマミィと子どもが笑ってくれたから、それでいい。目が2つ、鼻が1つ、口1つ。これ以上ないほど、そっくりだと思うんだけどなぁ。

 お父様にドアとテーブルと楽器の修繕をさせて、マミィの才能を披露する。
「それでは、お聞きください」
 毎日毎日練習をしたフィドルの腕を披露する。フィドルに飽きて手を出した、アコーディオンと横笛もついでに見てもらった。
「2週間で、フィドルを弾きこなすだと?」
「どうです? お父様に教わるより、習得が早いと思いませんか?」
 ドヤ! 私のマミィは、スゴいんだぜ! ただの赤毛じゃないんだぜ。
「わかった。琥珀の言い分は、一部認めよう」

 5日おきに、マミィのところに楽器を習いに行く許可がおりた。私は、そんなお願いは、欠片もしていないのに。
 やれと言われて流されてやっていただけで、楽器なんて興味もないし、上達したいと思っていない。マミィに恥をかかせないノルマは、既に達成していた。これ以上の練習は、別にいらない。余計な勉強の時間が増えた気しかしない。お父様の能力を堕として笑ってやろう、と画策しただけだったのに、失敗だった。私用の新しい楽器とか、買ってくれなくていい!
 私は、翡翠よりも強くなりたいだけなのに、邪魔なことが多すぎる。
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