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13.森の動物と遊ぼう

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 女手の足りていないお父様か父さんにあげようとしたら、引き取り拒否されたため、メイジーさんは、パパの家の女中さんになった。我が家は大した家ではないし、誰も女中なんて求めていないと知っているけど、ママの仕事が楽になるね! と、私は目を逸らすことにした。魔法で作った金は納める。だが、後は感知しない。よんちゃいだから、むつかしーことわかんない。
 そんなことより、私には、解決しなければならない課題があった。


 物見ヤグラでお仕事をしていたパパのところへ、飛んで行った。パパは、メイジーさんについて、何も言わなかった。今一番の安全圏だ。
「パパ、折り入ってご相談したいことがあるのです。今、お話ししても、よろしいでしょうか」
「今? まぁいいけれど」
 パパは、ヤグラの修繕をしていたようだ。
 個人的には、こんなヤグラをどうにかするより、村の周りの木の柵を城壁にした方がいいと思うが、以前そう言ったら、お父様に世界制服計画にまで話を飛躍されたので、触れないことにしたことがあった。
「先日、火蜥蜴に遅れをとってしまいました。強くなるためには、どのような修練を積んだらよろしいと思われますか?」
 これが、一番の課題だ。メイジーさんよりも、分詞構文よりも、大事な問題だ。火蜥蜴程度を倒せないなんて、格好悪すぎる。お母様に、叱られる。
「気持ちはわかるけれど、まだそんなに追い込まなくても、いいと思うよ。剣の腕なんて、成長とともに勝手についてくるから。
 わたしが琥珀くらいの頃なんて、毎日森で遊んでいるだけだったよ。猿と木登りしたり、熊と相撲をとったり、猪と追いかけっこしたり。楽しく遊んでいるだけで、自然といろんなことが身につくから、今は、楽しく遊べばいいよ」
 夜会の似合う美丈夫のパパなのに、幼少期はずいぶんとヤンチャに過ごしていたようだ。
 私は、森で動物を見かけても、狩って持って帰って食べさせてもらうことしか考えたことはなかった。それぞれの得意分野を教えてもらう、という発想はなかった。倒したら経験値が手に入って、成長するのではない。身体能力が上がったら、強い相手を倒せるようになるのだ。何かを倒すのではなく、地道に鍛錬を重ねる。継続的に続けるために、遊びに昇華するのは、とてもいい方法だと思えた。
「わかりました。早速、今から遊びに出かけます!」
 森には、お父様もママもメイジーさんもいない。父さんに出会うことはあるかもしれないが、父さんならマシな方だ。丁度いいじゃないか。
 物見ヤグラから、ダイレクトで森に飛んで行った。たいした装備も持っていないが、家に帰りたくないから、気にしない。


 森に着いたら、ザクザク獣道を進んだ。
 村近くの森は、ある程度、人道も整備されているのだが、誰にも会いたくないし、適当な獣を見つけるのが目的なので、獣道に入った。
 正直、この獣道は、新しいものなのか古いものなのかも、わからない。本当に、獣の道なのかも不明だ。だが、来たことのない道を一人で歩いているということに、わくわくした。お兄ちゃんになった気分が盛り上がる。

 お昼が近いかもしれない。少しお腹が減ってきたので、魔法を使い、その辺の適当な木にリンゴをならせてもぎ、かじりながら歩き続けた。
 梢が揺らぐ音、鳥のさえずり、自分が枯葉を踏み締める音。大抵、それらの音しかしない。癒しの音階を聞いていたのだが、中に土を撒く音が混じった。
 音のする方に注目すると、それほど大きくもないイノシシが足踏みをしていた。追いかけっこのスタートの合図だ。やっと遊び相手が見つかった。
 本当のかけっこスタートはいつだかわからないので、猪の向きに合わせて、勝手に走り始めた。イノシシは速い。だから、こちらも全速力だ。足が間に合う範囲で全力で走った。
 なのに、跳ね飛ばされた。負けた。風魔法で追い風を作った上で、負けた。どうやって勝てばいいんだよ。腹が立ったので、風魔法で半分に割った。


 丁度いい。お昼にしよう。
 少し開けた場所に移動し、落ち葉を集め、魔法で火をつけたところに、イノシシをそのまま放り込んだ。
 本当は、イノシシを解体したり、色々しなければならないことは知っている。でも、面倒臭いし、気持ち悪いから、やらなかった。万が一、失敗したら、もう一匹探してくればいい。そんなことをしたら、命を粗末にするなと、お母様に叱られるだろうが、私を置いて居なくなった人には、言われたくない。
 適当な頃合いに、イノシシを引っ張りあげたら、焦げ肉と生焼けのコラボ肉になっていた。だから、調理が必要なのか、とても勉強になった。だが、反省はしない。いい感じに焼けているところだけ、魔法で切って、かじりつく。
 硬いし、臭いし、ボソボソするし、なんだこりゃ、と思ったが、ワイルドな男飯だ。父さんだって、こんなご飯は出さないが、初めての料理にしちゃあなかなかだぜ、と言いながら、食べることにした。家に帰るよりはいい。

 泣きながらモソモソと食べていたら、獣道から緑小鬼が一匹出てきた。森の食事は、のんびり食べることも許されない。
 まぁ、緑小鬼程度、魔法一発で倒せるから、食事しながらでも相手にできるんだけどー、と食事を続けていたら、更に緑小鬼が増えた。全部で、いちにーさんしー、8匹? 別に、大した違いはない。緑小鬼は腹を壊すから食べるな、と言われている。何匹いたって、どうでもいい。

 大して離れていない上に、こちらは火を焚いているのだから気付きそうなものだが、緑小鬼は、まったくこちらにやって来なかった。こちらに来れば、殺すだけだ。私の強そうなオーラに気付いてしまったのだろうか。
 食べているだけで暇なので、観察を続けていたら、緑小鬼同士で争っているのだと気付いた。争っているというか、明らかに真ん中の一匹が、イジメられてるのかな? 仲良くしなよ。仲間じゃないの?
「むぐむぐ。大地のせーれー様。土の箱であの子をお守り下さい」
 タコ殴りにされていた子の周りに土壁を作り、保護してみた。このままだと窒息死してしまうので、周りを蹴散らすことにする。
「大地の精霊様、風の精霊様。鉄の弾丸で撃ち抜いて下さい」
 周りにいた緑小鬼の、足か腕を一箇所ずつ撃ち抜いた。みんな転げ回って何か騒いでいるけど、残念ながら緑小鬼語は未習得なので、何を言っているのかはわからない。魔法で木を削ってコップを作り、水も出して飲みながら眺めていたが、立ち上がった者も土の箱を叩いているだけで、こちらに来ない。つまらない。
 ごはんは食べ終わったので、落ちていた木の棒を拾って、緑小鬼の方へ歩く。森の生き物と遊ばないといけない。緑小鬼の遊びって、何だ? 個体によっては、剣や弓や魔法を使ってた気がするから、チャンバラならできるだろうか?
 そう思ったのだが、近寄ったら逃げられた。追いかけっこか! 念のため、土の箱を壊してから、緑小鬼を追いかけ回した。追いついた個体には、特級傷薬を塗ってやる。7体塗り付けたら、緑小鬼遊びは終了だ。深追いはしない。勝手に、どこへなりと行けばいい。
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