案内役という簡単そうに見えるお仕事

ゆーにゃん

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危険しかない旅の二日目

第14話

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 木藤と名乗った男は僕らに尋ねる。

「君たちは、どこへ向かっているんだい?」

 この男、自分で研究者だとか言うが実際にそうとは限らないし、これは僕個人の考えだが信用できない。答える義理もない。
 そう思っていたら、真冬があっさり答えてしまう。

「東三番街へ向かう途中よ」

 …………答えちゃうのか真冬さん。

「東三番街⁉ あそこは危険しかないところだよ⁉」
「ええ。それも承知の上で行くわ」
「そ、そうか……」

 驚き、止めよとするも真冬の即答に押し黙る木藤。真冬の視線に気づき、溜め息一つして僕も答える。

「その案内中だ」

 僕の返答に、木藤は腕を組み考え始めた。しばらくして、顔を上げた木藤は僕と真冬を交互に見て一言。

「うん。じゃあ、俺が東三番街まで連れて行ってあげよう!」

 は……? 連れて行ってあげる?
 今、会ったばかりの僕らを? どうして?
 疑問しか浮かばない。

「ナイ、どうするの?」

 真冬が意見を求める。
 このままだと食料も水も底をつく。移動手段が車は嬉しい。予定の日数より早く辿り着くことができるだろう。なんだが、僕が考えた真冬への計画が狂う。

 ……う~ん、とはいえ木藤の言葉も知りたい。

「分かった。木藤、だったか。お願いしたい」
「ああ。さあさあ、乗った乗った」

 木藤が運転する軽トラックの荷台に乗り込む僕と真冬。
 荒野を走り、流れる景色を見つめる真冬。僕は、聞かれたくはないがタイミングもないので木藤に話しかける。

「木藤。さっき言っていた、第二世代、という言葉をどこで知った?」

 少し棘のある言い方。返答次第ではあの力を使う必要があるかもしれない。
 真冬を横目で見れば、会話を黙って聞く様子だがいまいち内容を理解しているわけではなさそう。
 バックミラーに映る木藤の表情はどこか苦しそうで語る。

「俺は、にも関わっていたから」
「――っ!」

 第一世代の実験……。あれに関わっていたのか……。

「孤児、行き場を失った子供たちの居場所を作ろうと引き取って先生の真似事もしてね。しかし、ある日。上の命令で子供たちが連れていかれて、あの実験に手を貸すことになった」

 全ては、この地下街を盛り上げるための駒でありシステムの歯車のために……。
 木藤は続ける。

「だけど、実験は失敗に終わり第一世代はみな処分と決定。俺は、最後まであの子たちを護ろうとしたが……この手は汚れきってしまっていた。そんな手で助けることも護ることもできるはずがない」

 その当時のことを思い出しているのか、話が進むにつれて苦しさが増し泣きそうな表情になっていく木藤。

「結果、子供たちはこの地下街に屍人と同様の扱いとなり放たれた。そして、失敗を繰り返さないため詳細なデータだけはしっかり取り保存して、数年かけて生まれたのが第二世代だよ」

 揺れる車、空気が重くなる。
 木藤はミラー越しに僕を見つめ言う。

「俺は、第二世代の実験には関わっていない。だが、君が第二世代だと分かったのはその髪色と瞳の色だよ。第二世代は実験の影響で、髪と瞳の色が白髪と赤い目になるからね」

 その言葉に、真冬が反応した。その事実に目を開き固まる。それを、僕は前髪の隙間から横目で見て取れた。
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