案内役という簡単そうに見えるお仕事

ゆーにゃん

文字の大きさ
上 下
14 / 36
分からせるための旅路

第12話

しおりを挟む
 三人は銃を構え撃ちまくる。

 ドドドドドッ――。

 と、言葉にして言うならそんな感じだ。

 というか、けたましい音が鼓膜を揺さぶり頭に響く……!

「あっ、耳を塞いでてね」
「もっと、早く言いなさい!」

 撃ちながら言い忘れていたことを、今更ながら口にする日輪に耳を両手で塞ぎ怒る真冬。僕も耳を塞ぎ、言うのが遅いんだよ! と真冬同様に内心で怒る。

 耳を塞ぎ掃討が終わるのを待つ。
 銃声の中に、豪快に笑いながら楽しげな今井と「まだまだよ!」と叫ぶ日輪の声が聞こえてくる。

 屋根の上から薬莢が散らばり落ちてくるのをうっとしげに避け、火薬の臭いに顔をしかめる。それからようやく、銃声が止み耳から手を退け辺りを確認する。まだ、屍人が残っていては危険だ。

「終わったわよー」

 そう屋根の上から日輪の声がかかる。
 大広場には無数の結晶が転がり人工の夕日の光を浴び赤く光る。日輪に連れられ降りてくる真冬。

「ねえ、あれは?」
「ああ、あれは結晶だ」
「結晶?」
「屍人を狩って倒すと、あの結晶が残る。あれが稼ぎになるからな」
「そうなのね」

 三人も降り、結晶を回収していくのを見つめる。

 見ただけでも五十はありそうだな。あれだけあれば、それなりの額になるか。数個だけだとお小遣い程度だが、数をこなせばそれなりの金額になる。だから、一網打尽して一気に稼ごうって考えたのだろうが。

「あれ、どれくらいの額になるの?」
「そうだな。一個だとそんなにはいかない。でも、数があれば数万から数十万はいくんじゃないか」
「それで、誰もが屍人を狩って稼ごうって考えるのね」
「まあ、その分、命の危険はあるけど」

 そんなことを話す間にも、結晶の回収を済ませた三人がこちらにやって来る。

「手を貸してくれてありがとう。お陰で、稼げたわ」
「そうですか。それは良かったです」

 と営業スマイルで返す。隣りにいる真冬は、僕の営業スマイルに少し引き気味。そんな真冬を気にせず、日輪たちに護衛されながら街を出る。

 出た先で日輪から、別に欲しくもない予定を聞かされる。

「私たちは中央区に戻って換金するわ。じゃあ、ここで」
「はい。お気をつけて」

 当たり障りのない返事をして別れる。個人的には、もう会うこともない……いや、会いたくない連中だ。
 初心者向けの街ではなく、中級者や上級者向けの街で屍人の掃討をやってくれないかな。まったく、とんだ目に遭ったもんだ。

 予想外なことはこの先でも起こりうる。だから、真冬へ訊く。

「本当にこのまま、東三番街へ行くのか? 今以上の危険があるかもしれないぞ?」

 その問いに真冬は、僕の目を真っ直ぐ見つめはっきりと言う。

「行くわ。この先、危険だとしても」
「……そうか」

 はあー……。考えは変わらず、か……。一発目の作戦は失敗だなこりゃ……。
 このまま空き家が見つからなければ野宿だし……。

 そんなことを思いながら、夕日が沈み夜の訪れを教える空を見上げる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

魔族に育てられた聖女と呪われし召喚勇者【完結】

一色孝太郎
ファンタジー
 魔族の薬師グランに育てられた聖女の力を持つ人族の少女ホリーは育ての祖父の遺志を継ぎ、苦しむ人々を救う薬師として生きていくことを決意する。懸命に生きる彼女の周囲には、彼女を慕う人が次々と集まってくる。兄のような幼馴染、イケメンな魔族の王子様、さらには異世界から召喚された勇者まで。やがて世界の運命をも左右する陰謀に巻き込まれた彼女は彼らと力を合わせ、世界を守るべく立ち向かうこととなる。果たして彼女の運命やいかに! そして彼女の周囲で繰り広げられる恋の大騒動の行方は……? ※本作は全 181 話、【完結保証】となります ※カバー画像の著作権は DESIGNALIKIE 様にあります

処理中です...